何故だかこの日この時間、此処に皆、来ると思っていた。確信、信頼、願望とは違う、もっと単純で餓鬼臭い理由。 逢いたい。 そう思ったから。 Dark in the pool 刀。 それは、敵を斬る為のものではない。弱き己を斬る為のもの。それは弱き己を守る為のものではない。己の魂を守る為のもの。 (やっと…強くなれたよ) 貴方はこんな私を。こんな私達をどう思うだろう。 (やっと、やっと貴方の教えに応えられる、よ…) まったく仕様のない子たちだ、と言って頭を撫でるだろうか。 (誰よりも優しく、誰よりも厳しかった) 『私のせいで枷を作ってしまったのですね』と困った顔をしたあと、優しく諭す様な、でも力強く重く厳しい口調で怒るのだろう。 (家族よりも家族だった) 一度だけ、叩かれた事がある。 頻繁に出没していた夜盗が寺子屋を荒らした時。一人、山林の中を追いかけた。必死に追いかけ、そして斬った。 (先生…) その時の叩かれた私よりも痛く泣きそうなあの人の顔は、きっとずっと忘れない。 (私は、鬼になります) 心配した、と。 盗られた金品よりも。荒らされた部屋よりも。貴女が夜盗を斬った事よりも。居なくなった事が、己を犠牲にしようとした事が哀しかった、と。 (正しいか正しくないかは誰も分からない) 血を浴びた私を躊躇い無くきつく、きつく抱きしめた。生きていてくれて良かった、と。 (ただ、もう、後悔も迷いも無い) 私は、その時初めて優しさと言うものを、愛情と言うものを知りました。 (生きる為に。明日の為に、鬼となります) 出会いが必然なら別れもまた必然。けど、再会もまた、必然ですよね… 師 「松陽先生、」 墓石に彫られた魂の教え。四つの声が重なり空へ霧散する。 身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂 ---------- 2010,05,15 ヒロインの独白と想い出 |