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迷子はもうおしまい



都会のネオンが無いだけで真っ暗な夜。
星がこんなに綺麗だと気付いたのは多分、キミと一緒に空を見ているから。
ここが昔っから穴場なのよ、と人混みから少し外れた小高い丘の上に手を引かれ、合切袋にいつの間にやら入れられた、大きめの風呂敷を取り出し広げる。


「はい、特等席の出来上がりー」


早々に腰を下ろし、隣に早く座るようせがむ仕草は矢張りいつもより子供っぽく。


「どうしたんです?」
「んー?何がー?」


打ち上げられる大輪の華々に感嘆の声を上げながらも、視線はこちら。


「いえ、ただ…言葉が軽い…いや軽快?」


朱、黄、緑、金―――――
反射して映り込む花の色に照らされた横顔が、


「ジュニアが鈍ちんじゃなくて良かったわ」
「鈍ちんって……」


こう言う所で年齢差を感じる。そして少し、彼に嫉妬。同郷を羨むなんてまだまだ子供臭い、な。


「私ね、ジュニアに聞いて欲しい事があるの」
「何でしょうか」
「ふふふ、やけに改まるのね」
「貴女が自分の事を自分から話すのなんて滅多にありませんから」
「耳が痛いなぁその言葉」


少しバツが悪そうに苦笑。
でも、矢張り何処か嬉しそうな笑顔に彼女自身とこれからの関係の変化、を感じる。
不安。
少し、ほんの少しだけ、不安。


「私ね、会社辞めようかと思ってるの」
「え、――――」


打ち上がる花火の音が、遠い。


「あーもーあからさまにそんな顔しないの。オバサン凄く罪悪感」


話の腰は折らない。人の話はちゃんと最後まで聞きなさい?と両頬を掌で挟まれる。
瞳が少し、呆れてる。嗚呼、またやってしまった。


「すみま、せん…」
「よろしい、それじゃあそんな素直なジュニアくんに早速朗報だ」


良く知った柔らかいソレで唇が塞がれる。狡い、な……やっぱり反則的、だ―――――


「会社は辞めても、バーナビー・ブルックスJr.の恋人を辞めるつもりは無いわ。これからも、ね」
「、………はい」
「まァったく現金な笑顔ね」
「、っ――――」


面白い程表情筋がコロッと変わったのは自分でも分かった。一瞬にして顔に熱が集中。


「それで、準備はオーケイ?」
「えぇ、随分と前から」
「あら、ジュニアも言うようになったわね」
「貴女の恋人なので、」


その爽やかスマイルが憎い。
これ以上惚れさせて何がしたいのよ。



迷子はもうおしまい



「私の両親ってね、ジャーナリストだったのよ」



(First things first.)
(最初のものを最初に)

(急ぐ必要も、焦る必要もなにもない)
(全てがこのタイミングで、この瞬間)
(早過ぎず遅すぎず、)


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2011,09,04