ギョッとするほどの力で腕を掴まれる。 「な、に、ジュニ…っ―――――」 噛み付くだなんて生易しいものではない。食らい付かれた。 「、ンン……やめ、なさ…い…っ!」 捩込まれた舌。 後頭部を抱え込まれ逃れる術は無し。 上顎の裏を舐められ乱暴に甘さを引き出される。 「ん、っ――――ジュ…ニ、……」 聞く耳持たずとはまさにこの事。 カウチがすぐそこにあるにも関わらず、性急に求められ壁とバーナビーに挟まれ前進も後退も不可能。 「レティ、レティ…、レティっ……!!」 ようやっと唇から離れたかと思えば今度は必死に名前を呼び続ける唇。 力で敵う訳がないじゃないか。 未だに強い力で押さえ付けられている手首は、実は早々に抵抗を諦めていた。しかしそれすら気付けないほどに余裕無く、何かに追い立てられているかの様に必死で。 「、やっ……あ、ンァ…っ」 首筋、喉、鎖骨、肩、乳房、腰、臀部、大腿――――― 上から滑り落ちる口づけ。 下から迫り上がる無骨な手。 あとはもう、流されるしかない。 割り入れられた膝頭。剥ぎ取られたショーツ。抱え上げられた右足。 「…ふっ……や、ぁバーナ、ビっ、……」 恐怖は、無い。 これは子供の癇癪と同じ、だ。 普段、器用そうに見えても実はその逆。吃驚するほど不器用で適当で、繊細。 だから――――― 「っは、ぁ……、も、…む、り…」 乱された着衣とは裏腹にしつこいくらいに丁寧な愛撫。ほら、不器用。 「レティ……レティ、ラティーシャ…っ」 「っ、ひ……きゃ、あ……あ、っぁ…!」 泣くな、バカ。 どうしてキミが泣くかな。 私はここに、キミの腕の中に居るでしょう。 よわむしけむしのなきむしこむし 不安定な感情。 不安定な理性。 確かな愛情。 多分、不安にさせたのは私、のせい。 「これ、強姦って言うのよ?知ってる?」 赤く痕の付いた左手首をさすりながら着乱れたシャツとスカートを整える。 「恋人同士なのでその限りではありません」 「恋人なら何しても良いって?」 しれっと躱すが、次に続く言葉の応酬がない。 気持ちの悪い、間。 まるで私が何か悪い事をした気分だ。 「ジュニ、ッ、―――――」 「好きです。愛してます。貴女も、でしょう?」 真っ赤な瞳で震える口端。ぎこちなく緩ませる目尻。 「ああもう全く、そんな顔して言う言葉じゃないわよ…?」 語らない罪。 はぐらかす罪。 開いた先の二重扉。 どこまで逃げれば気が済むのだろう――――― (どれにもなれない私はただの臆病虫な卑怯虫) ---------- 2011,07,07 |