触れれば焦げてしまいそうな。熱く厚い背中。逞しい胸板と両腕の筋肉の起伏。誰よりも優しくて強くておっちょこちょいな私のヒーロー。 「ん……?どうした」 三歩下がって何をするでも無く熱い視線を送る私に、アントニオは振り返る。 「んー……、いや別に?」 「別にってお前……」 そんな訳ないだろう、と少し眉尻を下げ困り顔。 「そんな顔しないでよ」 ごめんごめんと三歩前へ進む。そっと、シャツの端に触れてからゆっくりと彼の背中に頬を押し当て腕を回して抱き着けば、ぽすりと大きな掌で撫でられる。私はこの瞬間が一番好きだ。 「この大きな背中がシュテルンビルトの平和を守ってるんだって思ったらなんだか嬉しくてさ」 「なァに言ってんだ。デートはすっぽかすわ記念日や誕生日なんかもまともに祝ってやれてねぇし、オマケに人質にされちまったり危険な目にばっか遭ってろくな男じゃねぇ」 「まぁ確かに否定は出来ない」 クスリと苦笑い。 確かに何度危険な目に遭って、それこそ死ぬ思いもした。それでもアントニオの背中を見る度思うのだ。彼が居る限り私は絶対死ない、と。 「でも、この背中は私の誇りなの」 「お前……」 仕様の無い奴だなと幸せの溜め息を一つ。ふわりと重力を失えば漢らしい両腕の中に完全ホールド。 背中 正面にしっかりと姫抱きに抱えられ顔と顔が直ぐ間近。太い首に腕を絡ませチュッと唇を啄みそっと耳元で囁けば、また一つ、幸せの溜め息が漏れる。 「本当、お前には敵わないな」 再び、今度はアントニオの方から熱く長いキス。 (私の専属スポンサーになってよ) (お安いご用意だ) ----------- 2011,05,16 |