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「#エロ」のBL小説を読む
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取り敢えず、全てのことに感謝!



「遅いのォ」


背を丸め、顎をテーブルに乗せぬくぬくと炬燵に入りながら愚痴る待宮。


「わしゃぁもう腹ぺこじゃて」
「腹ぺこってお前さっきポテチ一袋食ってただろォが」


同じく炬燵に入り目の前にミカンの皮のタワーを築き上げている荒北が待宮に噛み付く。


「さっきメールで、バイト先を出たといってたからもうすぐ着くはずだ」


台所からエプロン姿の金城がひょいと顔を出す。時刻は19時45分。クリスマスが終わりただの平日になるまであと4時間ばかり。
18時頃からバタバタと集まり出した二人にとって、もうすぐ2時間になる待ち時間は流石に飽きるしお腹も空く。


「なにが悲しゅうて男三人でクリスマスに炬燵囲まにゃいかんのじゃ」
「まぁ、あいつが帰ってきた所で女の勘定には入らねぇけどな」
「確かに。あー佳奈に会いたいのぉ…」
「二人とも好き放題言っているが、一応その『女の勘定に入らない』女の彼氏が目の前に居る事は忘れてないよな?」


詰み上がったミカンの皮をゴミ袋に入れ、炬燵の上を台布巾で拭きながらそろそろ帰ってくるであろう涼子が帰宅後直ぐにクリスマスパーティーを始められるよう、金城はいそいそと準備に取り掛かる。
サラダよし。つまみよし。メインの唐揚げはしっかりイヴの日から漬け込まれているし、ビールもシャンパンも缶酎ハイも充分に冷えている。あとは涼子がケーキを買って帰ってきて唐揚げを揚げれば良いだけだ。
ちらりと携帯を見ればメールが一件。差出人はもちろん涼子からで『もうすぐ帰る』と一言。それを荒北と待宮に伝えようとした時だった。


「ん…?なんじゃァこれは」
「あ、それは」


暇を弄んでいた待宮が部屋の隅に積み上げられた雑誌や漫画の山から何やらイケナイものを見つけたようだ。


「うわっ!えげつなっ!」
「ゲッ…マジかよ」
「真護クンこんな趣味が……」


バサバサと数冊引っ張り出して炬燵の上に広げれば、真っ裸の女が良く分からない生物と絡み合っている表紙や獣の群れに前からも後ろからも攻められている、何故かおっぱいが4つも付いている女の子の表紙にどぎついショッキングピンクのタイトルが目に痛い。


「複乳娘vs獣〜飛び散るアクメ汁〜……72時間耐久触手凌辱祭り…オェ…ッ」


タイトルを読み上げながら眉をひそめる荒北。


「いやそれは俺のではなく」
「お前のじゃなかったら誰のだっつーんだよこのエロ河童」
「こないな趣味が金城にあるとはのォ…人は見掛けによらなんだ」


若干……いやかなり顔を引き攣らせながらやんややんやと矢継ぎ早に非難の声を浴びせ掛けていればふと、背後に気配を感じる。


「ただいま、ってあー!なに人の大切なエロ本勝手に漁っとるんじゃ!?最っ低!死に晒せ!」
「「は??」」


珍しくハモる荒北と待宮を見てククッと笑いを堪える金城。
目を白黒させエロ本と涼子とを行ったり来たり見比べた後改めて「ハァァァ!!??」と二人して叫ぶ。


「漁るも何も、そもそも読み散らかしたまま出掛けていったのは涼子だろう」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだ。その辺に読み散らかしていったのを俺が隅に纏めて置いたのを待宮が目ざとく見つけただけだ」


まぁ勝手に読んだ事には変わりないがな、などと涼しい顔で言う金城と涼子を見て、年末に来てとんでもないパンドラボックスを開けてしまったなと暫し待宮はうなだれるのであった。



取り敢えず、全てのことに感謝!



何に対して乾杯かは分からないけれど、シャンパンを注いだグラス(と言っても洒落たシャンパングラスなどではなく普段使いのコップだが)を四人でカチリと鳴らし合い今年も色々あった一年を労う。


「ほい、唐揚げ第一弾おまちどおさま!」
「ッシャ!いただきます!」
「お好みでタルタルソースもどうぞ」
「ほんっと涼子は料理だけは上手いのぉ」
「料理だけはってなにさ。チャリのメンテとカスタムもじゃろ」
「そやったそやった」


ガハハといつもの調子で軽口をたたき合いながらもパクパクと口の中に吸い込まれていく唐揚げを見ながら、フッと笑みが零れる。
台所仕事を金城とバトンタッチした涼子が器用かつスピーディーに唐揚げを次々と揚げてゆく。
普段標準語の涼子も酒が入り、且つ、同郷の待宮と話すと時は広島弁が出やすい。
唐揚げ第二弾を揚げ終えればそのまま盛り付け運ぶのではなく一手間。その間に洗い物を済ませる。洗い物と言っても金城があらかた準備をしながら洗ってくれていたので洗う物はと言えば、自分が揚げる時に使った菜箸と網とバット、肉を漬けておいたタッパーくらいだけで、回を重ねる毎に増す金城の主夫力の高さに感服するのだった。


「第二弾は特製トリ唐南蛮じゃよ〜」


そう言いながらキッチンの電気を消し、ビールと唐揚げの皿を運び、涼子はようやく金城の隣に腰を落ち着かせる。


「お疲れさま」
「どう致しまして」


数センチ残してぬるくなったシャンパンを一気流し込めば、ハイボールの缶を差し出される。流石、分かってらっしゃる。
仁義無き唐揚げ戦争をおっぱじめている荒北と待宮を横目で確認しつつ、こっそり軽く唇を重ね合いクスリ。


「来年もよろしくお願いします」
「いえいえこちらこそお手柔らかに」


もう一度二人だけで缶と缶をぶつけ合い乾杯。



(あ、なにコソコソ二人でいちゃついてんだよ!)
(ずるいぞォ!ワシも佳奈といちゃつきたいん我慢しとるんじゃけェ、配慮しろ配慮!)


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2014,12,26