不動明王



はいっ!
さて、今日は何の日でしょうか?
5月21日、いいえ。特に祝日だ、とかいう訳ではありません。
え?羽生蛇村で三十三人殺し事件が起こった日?いやあの、そんなマニアックなのは…ちょっと…。
誕生日!誕生日ですよ!私、名字名前の!ちょっと考えたらすぐ分かるでしょう?
…というか!聞いてるの?あきおくん?あーきーおーくん?おま、ちょ、寝るなあああああ!
起きて!起きてよあきおくん!私の話を聞いて!あきおくーん!



…とまあ、そんな訳で…今日は私の誕生日です。
朝からホントにたくさんの人がお祝いにきてくれました!
祝ってくれると同時にあまーいお菓子、ペンギンのぬいぐるみとかとか、難しそうな本とか…とにかくいっぱいプレゼント貰っちゃいました!ふへへ、顔が広いとやっぱ色々と得だね!
それに祝ってくれたのは日本代表のみんなだけじゃなくて、イギリス代表のエドガーさん?とか、イタリア代表のフィディオくんとか…。
顔見知り程度なのにわざわざジャパンエリアに来て誕生日を祝ってくれたんです。
もう、今日は最高の1日だね!


…だけど、だけども。
1人、たった1人祝って欲しくて仕方ない人が居ます。だけどその人…あきおくんはまだ全然私に話し掛けてくれていません。
照れているのか、はたまたただ祝いたくないだけなのかどうかはよく分からないけれど…。どうしても祝ってほしかったからつい先程あきおくんに直接言いに言ったのだけれども…

…寝ました。あきおくん
話の途中で見事に夢の世界に旅立ちやがりました。
せっかく私が恥ずかしいのを我慢して

「祝って欲しいあまりに遠回しに自分の誕生日をアピールしようとしとるちょっぴり痛い女の子」

…ん?

「やあ。こんにちは、名前ちゃん」


私が考えていたことを先読みしたかのようにズバリと当てられ、ビックリして振り向くとそこにはチームメイトの基山くんが居ました。


「あ…なんだ、基山くんか」

「なんだ、って…何?てっきり不動くんが来たとでも思った?」


また言いたい事をズバリと当てられて、思わずうっと呻き声。
そんな私を見て基山くんはくすりと笑いました。な、何なのこの子!

…と、そんな事よりも!


「基山くん!」




基山くんなら男の子同士何か思うところあるかなあと思って、あきおくんの事を相談してみました。
あきおくんがおめでとう、すら言ってくれませんーって。
みんなに沢山のプレゼントやお祝いの言葉を貰って嬉しかったけれど、正直に言うとそれより私は、あきおくんに「おめでとう」って言ってもらえた方が嬉しかったり、します。
ほら、やっぱり大好きな人に誕生日を祝ってもらえるのは嬉しい事じゃないですか!

友達や仲間に祝って貰うより好きな人に祝って欲しい。これはおかしい事なのかな?


私の言葉を聞いてしばらく顔を俯かせて考察をしていた基山くんが顔を上げ、じっと私を見つめてきました。
とてもとても真剣な表情に少し引け目を感じたけれど負けじと見つめ返します
またしばらく間が空いてから基山くんがゆっくりと話しだしました。


「あのね、名前ちゃん」

「…はい」

「俺はね?多分それ…そんなに悩む事無いんじゃないかって思うな?」


想像すらしない答えにぽかん、とする私を尻目に基山くんは話を続けます。


「名前ちゃんは、不動くんにおめでとうって言ってほしいだけなんだよね?」

「え?う、うん」


突拍子も無いいきなりの問いかけに動揺しながらも答えます。
基山くんがどうしてこんな質問をしてきたのかが分かりません。
だって、そんなの当たり前でしょう?
大好きな大好きなあきおくんに祝ってもらえて嬉しくない訳がありません。

照れて私から目を反らしながらも本当に小さな声でおめでとうって言ってくれるあきおくんを頭の中で想像してみます。
ふ、ふわわわ…!
なんと破壊力抜群な…!
ほっぺた、耳…顔全体を赤くしながら言ってくれたりすると美味しいな!

…うん、どうやら私の思考回路は今日も絶好調なようです。


「…ちゃん、名前ちゃん!」

「……は、はいっ!」


すっかり自分の世界に旅立っていたせいか、私は基山くんが私を呼んでいる事に気付きませんでした。
慌てて基山くんに返事をします。基山くんはやれやれといった表情で笑っていました。


「まったく…どうせ不動くんの事でも考えていたんでしょう?」

「え!ち、違、いません…。」

「ホントに愛されてるね…ね?不動くん?」


え?


基山くんの言葉にぽかんとしていると基山くんの後ろの廊下の曲がり道から何とも言えない顔をした不動くんが出てきました。
…手にいっぱいラッピングされた袋を持って







「どうして誕生日知ってたのに祝ってくれなかったの?」

「あァ?こっちにも色々準備があったんだよ」

「別に祝ってくれるだけで良かったのに…こんなにいっぱい」

「ンだよ、マネージャーの女達に色々貰って嬉しそうにしてたくせによ?」

「、ははっ!だからこんなにいっぱい?もしかして秋ちゃん達に嫉妬してたの?」


笑いながら言うとあきおくんは顔を真っ赤にしながら否定しました。あー、もう!可愛い!


「っ、お前なんでアイツと話してたんだよ!?」

「アイツ?アイツって誰?」

「アイツだって言ってんだろ、基山ヒロト」

「え?話聞いてたんじゃないの?」

「アレは偶然通りかかったらお前らが仲良さそうに話してたからだっつーの」


ぷいっと目を反らしながら言うあきおくん。拗ねてる。拗ねてるよこの子!可愛いなあ
このままあきおくんをさらに誤解させて遊ぶのもいいけど拗ねて話を聞いてくれなくなったりしたら嫌なのでとりあえず誤解を解く事にしました。


「あれはね、あきおくんの事を相談してたんだよ?基山くんに」

「…ホントかよ」

「私が嘘つくと思う?」


そう言うとあきおくんはチッと舌打ちしながらも表情を緩めました。よかった。信じてくれたみたい

さて!誤解も解けたことだし、二人でゆっくりケーキでも…


「だけどよォ、俺以外の男の二人きりで話してたってのは感心しねぇなあ?」

…え

「教えてるよ、俺を妬かせたらどうなるか」

「あの、あの、あきお…さん…?」

「俺からの誕生日プレゼント、たっぷり受け取れよな?名前ちゃん?」



あきおくんのせいで今年の誕生日はなんだかとんでも無い誕生日になりました
けど、やっぱり、最高の誕生日だったなあ…なんてね!






―――――――
for Kurea

こんなあきおでごめんなさいいいい
くれあ様に限りお持ち帰りフリーです


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