◎二日前 東条
俺が喧嘩に呼び出されていたのと、古市は用事があるとかで、一人の帰り道、河原を歩いていたらタコ焼きの屋台でバイトをしていた東条に会った。
「男鹿じゃねぇか。」
「おう。」
「なんだ、やりに来たのか?」
東条はそう言って拳を作ってみせた。
「悪ぃが、今日はそういう気分じゃねぇんだ。」
「そうか。ならタコ焼き食うか?」
「いらねぇ。」
そう言った途端、腹から音がした。
「腹は正直だな。食ってけよ。」
東条は笑って、タコ焼きを差し出した。
俺が河原に座ってタコ焼きを食おうとしたら、休憩だ。と言って、東条が隣に座ってきた。
食べ始めたら、あっという間に食べ終わってしまった。手持ち無沙汰になった俺は、東条にも聞いてみることにした。
「なぁ。」
「何だよ。」
「…もしお前が大切なやつにプレゼントをあげるとしたら、何をやる?」
「恋人か?」
今まで恋人と言って笑われてきたので、言わないようにしたのに、何故か東条は当ててきた。
「…そうだ。悪いかよ。」
また笑われるだろうと思い、目を逸らしたが、意外にも笑い声は聞こえず、喧嘩している時や学校にいる時には見られないような目で、俺を見ていた。
「お前にも、大切なやつがいるんだな。」
どこかひっかかる言い方だったが、気にせず話を進めた。
「で、どうしたらいいと思う?」
「そりゃお前、自分で考えろよ。」
東条は先程の表情と変わり、あっけらかんとした様に言った。
「考えられてたら、お前になんか聞かねぇよ。」
「それでもお前で考えてみろよ。そいつのことを考えてやるのが、大切なんだろ。要は物じゃなくて、気持ちってことだろ?」
東条のその言葉は、すんなり入ってきた。物じゃなくて気持ち。俺がどれだけ古市のことを考えて、やれるかがポイントってわけだ。
「…サンキューな。」
「これくらいでいいなら、いくらでも相談乗るぜ。」
今度は喧嘩しに来いよ。と言って、東条はタコ焼きの屋台のバイトへ戻った。
俺は、すっきりした気分で帰ることが出来た。
古市の誕生日まで
あと二日。
(古市の、気持ち…。)