◎四日前 神崎




古市に、用事があるからと言って珍しく買い物に来ていた放課後。これまた珍しい人物に会った。

「神崎…。」

「げ、男鹿…。」





「ほらよ。」

差し出された缶コーヒーを無言で受け取り、プルタブを開けた。

「ったく、礼も言えねぇのか。」

「む、あぁサンキュー。」

神崎は呆れていたが、諦めたように自分のヨーグルッチを開けていた。

「珍しいじゃねぇか、男鹿が一人でいるなんて。古市はどうした?」

「…。」

古市には内緒で、こっそり誕生日プレゼントを買いに来たなんて言ったら神崎は笑うだろうか。神崎にも、古市の誕生日に何をプレゼントするべきか聞いてみたいところだが、昨日の夏目の一件があったので、少し躊躇ってしまう。

「なんだ、お前ら喧嘩でもしたのか?」

「なわけねーだろ。」

「じゃあどうしたんだよ。」

古市と一緒ではないのが、そんなにおかしいのだろうか。

「そんなにおかしいか?」

「何がだ?」

「古市といないのが。」

「そうだな、男鹿と言ったら古市だし、古市と言ったら男鹿だろ。」

その言葉を聞いて、妙にくすぐったい気持ちになった。

「笑ったらぶっ殺すけどな、」

「いきなり何だよ。」

「お前なら、恋人の誕生日プレゼントに何をやる?」

すると、神崎は口をポカンと開け、おもむろに口を手で押さえた。

「おい、笑ったらぶっ殺すっつったろ。」

睨みながら言ったら、神崎の顔が真面目になった。

「恋人に誕生日プレゼントか。俺ならそうだな、これをやる。」

そう言って神崎は、すでに空になったヨーグルッチを上にあげた。

「…どれだよ?」

答えなど分かりきっていたが、聞き返してしまった。いや、いくらなんでもそれはないよな、ないない。

「ヨーグルッチだ。」

あったよ!こいつ、恋人の誕生日にヨーグルッチあげるつもりか?!

「神崎君、真面目に答えてくれるかな?」

あまりにふざけた返答に神経が切れそうになったが、大人の余裕というやつで何とか抑えこんだ。

「大まじめだ。ヨーグルッチだぞ、貰って嬉しくないわけないだろ。」

聞く相手を間違えただろうか。無性に脱力感に襲われた。

「そっか、うん…。あんたに聞いた俺が間違ってた…。」

「んだと?!喧嘩売ってんなら買うぞゴルァ!」

神崎は少し顔を赤くしていた。恥ずかしかったなら、言わなければいいものを。

「まぁサンキューな。」

空になった缶を持ち、立ち上がりながら、全く役には立たなかったが、一応話を聞いてくれたお礼を言ったら、また口をポカンと開けていた。が、今度はドヤ顔になった。

「おう。また何かあれば、俺を頼れよ。」

何だかイラッとくる言い方だったが、また何かあったら話をするぐらいならしてみようかと思った。









古市の誕生日まで
あと四日。





(コーヒー苦い…。)





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