たまにはいいですね
「古市、これを飲め。」
「…はい?」
朝、いつものように男鹿を迎えに行きリビングで待っていると、ヒルダさんがコップに入った怪しげなピンク色の液体を差し出してきた。
「これを飲め。」
「いや、聞こえてますけど…。なんでそれを飲まなきゃいけないんですか?」
「…いいから飲めと言っておろうが!」
ヒルダさんは俺の顎を持ち、無理矢理上を向かせると、その液体を流し込んできた。
飲み込まないようにしていたら、ヒルダさんは鼻をつまみ、息が出来ないようにした。
ゴクン
口の中に甘ったるい味が広がる。と、同時に視界がぐにゃりと揺れた。そして俺の意識はブラックアウトした。
目を開けると、見慣れすぎた天井が目に入った。
顔を動かして部屋を見回すと、こちらに背を向けた男鹿が見えた。ぼんやり背中を見つめていると、男鹿が振り向いた。
「起きたのか。」
「…うん。」
男鹿は手にタオルを持っていて、それを俺の頭に乗せて言った。
「お前、倒れたんだぞ。覚えてるか?」
「うん…。」
さっきのヒルダさんはとても怖かった。鼻をつままれた時は、死ぬかと思った。
「良くなるまで寝てろって、お袋が言ってたから、もうちょい寝てろよ。」
男鹿はそう言うと、水の入った洗面器を持って立ち上がった。
「どこ行くんだ?」
「これ片してくる。」
男鹿が行ってしまうと思ったら、勝手に腕が動いて、男鹿の服の裾を掴んでいた。
「…行かないで。」
「…古市?」
男鹿が不思議そうな顔で、こっちを見た。
「行っちゃやだ。」
もやが掛かったように、頭は回らない。けれど、男鹿の服を掴んだ手は離さなかった。
「どうした?」
「ここにいて…。」
そう言ったら、男鹿は顔を真っ赤にして俺の手を掴んだ。手を布団の中に入れて、言った。
「おとなしく寝とけ!」
「やだ。」
「駄々こねんな!」
「男鹿が頭撫でてくれたら寝る。」
俺がそう言ったら、男鹿は観念したようにしゃがみ込んで、頭を撫でてくれた。
「…なんか眠い。」
「さっさと寝ろ。」
男鹿がぶっきらぼうに言うので、また行ってしまうような気がして、手を掴んだ。
「行かねぇから、ゆっくり寝ろ。」
「…うん。」
その言葉を聞いて安心した俺は、眠りに落ちた。
「ツンデレのツンが無くなる薬?」
「そうだ。」
起きると、既に学校が終わる時間を過ぎていた。リビングに向かうと、ちょうどヒルダさんがいたので話を聞いたら、そういうことらしかった。
「え、どういう…?」
「フォルカスがな、ある悪魔に頼まれたらしいんだが、作ってみたものの効果がどうなるか分からなかったからな、お前で試してみたというわけだ。」
そう言うとヒルダさんはずっ、とお茶を一口飲み、湯呑みを置いた。
「最初からそう言ってくださいよ!」
「言っていたら飲んだか?」
「飲みませんよ!」
「そうだろう。だから仕方がなかったのだ。」
ヒルダさんはそう言うと、菓子盆に手を伸ばしお煎餅を食べ始めた。
「はぁ…分かりました。ただし、もう使わないでくださいよ!」
「分かっている。もう結果は出たしな。」
「じゃあ俺帰りますんで!」
荷物を掴んでリビングを出ると、男鹿が立っていた。
「帰んのか?」
「あぁ、今日はサンキューな。また明日。」
「おぉ。また明日。」
扉を閉めて自宅へ向かう。そういえばお腹が空いたなぁ、と思った。
古市が帰った直後。
「ヒルダ、あの薬くれ。」
「タダでは無理だ。それなりの対価が無ければな。」
「昼ドラのDVD全巻。」
「初回盤。」
「…。」
「どうした?デレデレな古市はもう見たくないか?」
「っ…!分かったよ!」
「交渉成立だな。」
そんな会話がリビングで繰り広げられていました。
―――――
紫髷さん、お待たせして申し訳ありませんでした!
デレがあんまり出てないのは気のせい…です…。←
おがふるなんですが、おがふる感がないのは何故。←
ダラダラと長くてすみません><
書き直しはいつでも受け付けています!
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