純心パラドックス
ゲームをしている男鹿の肩に頭を乗せる。いきなりの重量に男鹿がこちらをちらりと見たが、気にした様子もなく、テレビに視線を戻した。
その姿勢のまま漫画を読んでいたが、頭が安定しないので今度は胡座をかいている足に頭を乗せた。男鹿の足は筋肉質だが細めで、頭を乗せるには少し細すぎる。
なので今度は腕の中に入ろうと思い、コントローラーを持っているのでゲームの邪魔にならないように、足と腕の間から体を滑らせようとしたらさすがに男鹿が声を掛けてきた。
「待て待て。さっきから何だよ?」
律儀にゲームまで止めてくれたようだ。
「んー、何となく。」
「何となくかよ。どうかしたのか?」
「別に何にもない。」
何にもなくないのだが、男鹿に言ったところで解決しないし。
「俺もたまには、人肌恋しくなったりするの。」
そう言って無理矢理腕の中に入り込む。男鹿も最初は首を傾げていたが、ゲームを再開し始めた。
男鹿の胸に背を預ける姿勢になって漫画を読んでいたが、読むのに飽きたのでゲームの画面を見つめることにした。
単に人肌が恋しくなっただけではない。
この頃、男鹿と邦枝先輩の距離が近くなっているように感じる。ヒルダさんだってなんだかんだ言いながら、恋人とかではなく大切な人だと思っているはずだ。
そういうことを考えたらもやもやしてきて、男鹿にくっついていたくなったのだ。多分、独占欲とか嫉妬とか、そういうのがないまぜになったものだと思う。と、客観的に考えられるくらいには冷静だが、心中は穏やかではない。
ずっと男鹿と一緒にいたのは俺だ。いきなり出てきた邦枝先輩やヒルダさんに取られるなんて、絶対に嫌だ。そんなことを考えていても、男鹿が二人のうちどちらかを選んだら潔く身を引くつもりでいたのだが、どうやら無理なようだ。きっと俺は男鹿から離れられないし離すことも出来ないだろう。
そんなことを考えていたら、いつの間にか男鹿がゲームを止めていた。
「古市。」
「何?」
「こっち向け。」
半回転して男鹿と向き合う形になった。
「ったくお前は…。」
はぁ、とわざとらしい溜め息をつかれて少しカチンときた。
「はぁ?どういう意味」
だよ。と続くはずだった言葉は、男鹿の口の中に吸い込まれた。
男鹿の唇はすぐに離れて、寂しいなと思っていたら、男鹿の腕が背中に回って強く抱きしめられた。
「勝手に悩んで落ち込んでんじゃねぇよ。」
頭をぽんぽんと優しく叩かれて、目の前が歪んだ。
「…努力する。」
涙声にならないように、そう呟くのが精一杯だった。
「よし。」
なんで分かったんだ、とかだったら少しは俺の気持ちも考えて行動しろ、とか言いたいことはたくさんあったけど、今は優しい手が離れるのが惜しかったので、そのまま享受していることにした。
―――――
戦華様、お待たせして大変申し訳ありません。
変態男鹿orデレデレ古市とのリクエストでしたので、デレデレさせようとしたのですが、思いの外デレデレしてませんです←
あの、男鹿にべったりさせたかったんですが、書いてるうちに「こいつら普通じゃね?」ってなりまして、そしたら古市の思考回路がどんどんネガティブになって…って言い訳長いですねすみません←
書き直しはいつでも受け付けます!
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