男鹿と二人で家を飛び出した。










俺と男鹿は想い合っている。お互い想い合っていれば行き着く先は恋人という関係だ。しかし俺らは男同士。こんな関係を世間が赦すはずがない。もともと男鹿とは幼なじみでどれだけ男鹿が家にいようがどれだけ俺が家に行こうが親も何も言わなかった。
しかしそれが幼なじみという立場ではないと気付いた時の親の反応は早かった。



友達ではなかったのか。
どうしてあいつなんだ。
どれだけ不良でもいいからせめて女にしてくれ。



今まで散々仲良くしておきながら今までとは違うと分かった瞬間の変わり身が早い。大人とはなんて汚いのだろう。
どうやらそれは男鹿も同じだったようで、家族を振り払い部屋に篭っている時に男鹿から電話がきた。

『なぁ、古市。』

「何だよ。」

『二人で誰もいないところまで逃げようぜ。』





家から出ようとしただけで、親が飛んできた。
何だよ、その過保護っぷりは。ちょっとコンビニに行ってくると言って、財布と携帯を持ち、靴を履き、家を出た。




家を出て、少し歩くと男鹿がいた。

「大丈夫だったか?」

「何とか。で、どこ行くんだ?」

「決めてない。」

「決めてないのかよ!」

歩きながら男鹿と話す。いつもと変わらないノリに安心しながら。目的地はどこと言うわけではないが、とりあえず駅の方向へと歩く。
まだ高校生の俺らに車やタクシーと言った上等手段はなく、歩き、自転車、良くて電車と言ったところだろう。自転車の無い今、使える移動手段は歩きと電車だけである。
駅まで行って切符を買う。俺達の買える一番遠い駅までの切符を買ってそこに行き、誰も知らない場所で二人きり。悪くないと思う。

電車に乗り込み座る。もう夜も遅い方だったから、席はがら空きだった。男鹿の肩に頭を預ける。

「どうした?」

「何でもない。」

「眠いのか?」

「別に。」

会話はそれだけ。そのあとは男鹿が寝て、俺も一緒に寝てしまった。
起きたのは、目的の駅に着く少し前。男鹿はまだ寝ていて、危うく乗り過ごしそうになるとこだった。

「男鹿!次降りるぞ!」

「まだ寝かせろよ…。」

「馬鹿!いいから早く起きろ!」

ぎりぎりで男鹿を起こし降車する。



「…どこだ、ここ?」

電車を降りてみると、目の前には今まで見たことのない景色で無性に不安になった。普段と変わらないのは、男鹿が隣にいることだけ。それでも、今はその普段がなかったから、男鹿がいることでとても安心出来た。

「よし、行くぞ。」

「どこ行くんだ?」

「てきとー。」

「てきとーかよ。」

二人で手を繋いで、よく分からない道を歩く。男鹿は何も考えていないのか、どんどん進んでいく。
歩いていると何度も何度も着信が入ってきた。時間を見ると、すでに十二時を回っていた。時間を確認した後、着信が入るのが面倒臭くなって、電源を切った。





その後もひたすら歩き続けたが、俺の足から悲鳴が上がった。

「男鹿…。」

「どうした?」

「ごめん、靴ずれしたみたい。」

しゃがんで見ると、靴下が少し赤くなっていた。
男鹿も戻ってきて、俺の側にしゃがんで足元を見た。

「じゃ、今日ここで野宿でもするか。」

「え、大丈夫かよ?」

「大丈夫じゃね?夏だし。」

周りは海だったから、二人で砂浜に寝転んだ。救いだったのは今が夏だと言うことだ。きっと冬だったら寒くてどうしようもなかっただろう。
上を見上げると夜空に星が輝いていた。都会じゃ見れない光景だ。

突然、この世界に二人しかいないような気がして、怖くなった。何だか家族に会いたくなってきた。
男鹿とのことを反対するなら家族なんて捨ててやると思っていた。

だけど―――



切っていた携帯の電源を入れると、異常な数の着信とメールが来ていた。
メールを全て読んでいると、最初の方はどこにいるの、とか早く帰ってきなさいだったのに、最後の方はお願いだから帰ってきて、と書いてあって心配させてるんだと思うと同時に涙が出てきた。
男鹿を見るとどうやら同じだったようで、携帯を見つめながら苦い顔をしていた。

「男鹿。」

「…ん。」

「帰ろうか。」

「…そうだな。」

俺はこんなにも男鹿のことが好きなのに、それと同じくらい家族のことが大好きだから、どちらか片方だけを取るなんてこと出来なかった。




―――――

これtitleに更新しようとしたけど、無駄に長いし終わらせ方も分からなくなりdust行き。
この後、家に帰ったらめっちゃ騒ぎになっててなんやかんやで男鹿と付き合うことを渋々許してもらって…とかにしたかったけど出来ませんでした/∵\
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