「いい加減気付けよ!うんざりなんだよ、お前の我が儘に付き合わされるのは!」
「ふる」
「彼女とデートすれば邪魔されて!腐れ縁てだけで付き纏われて!挙げ句の果てに、頑張って合格した高校の合格取消だぞ!もういいだろ!どこまで俺を振り回せば気が済むんだよ!頼むから…!」
「…言いたいことは、それだけか。」
男鹿のその声音に、今まで声を荒げていた古市が静かになった。
「今まで付き纏って悪かったな。もう、お前の前には現れねぇよ。」
そう言った時の男鹿の顔は、悲しみとか怒りとかそういう感情を全て押し殺したような顔だった。
くるりと踵を返して去っていった男鹿を、誰も止めることが出来ず、ただ呆然と見つめていた。
「古市君、本当に良かったの?」
あんなのは本心じゃない。デートを邪魔されても、合格を取り消されても、男鹿と一緒にいることを選んだのは、結局自分だった。腐れ縁という言葉だけでつなぎ止めていたのは、自分の方だった。
それでも―
「…男鹿の傍に、俺はいない方がいい。」
―――――
古市が怒ったのは本心じゃなくて、男鹿に普通の男として生きてほしかったから。
付き合ってるというより、身体の関係だけみたいな。でも古市は男鹿の気持ちを分かってて、それじゃあいけないと思ってる。