「邦枝先輩!これどうぞ!」
朝、いつものように教室に入り席に着くと、銀の髪を持つ後輩が可愛くラッピングされたチョコレートをくれた。
「あ、りがとう…。」
「いえ、こちらこそ貰っていただいてありがとうございます。あ、姫川先輩!」
いきなりのことに面食らっていたら、次に教室に入ってきた姫川に駆け寄り、私にくれたのと同じものを渡していた。
「姐さん、おはようございます。」
古市君と姫川を見ていたら、後ろから寧々に声を掛けられた。
「あ、おはよう。」
その手にも、私に渡してくれたものと同じものが握られていた。
「寧々、古市君どうしたの?」
「私にも分からないんですよ。あいつ、来るやつに片っ端から声掛けて渡してるんです。」
ちら、と古市君を見てから、寧々が言った。
「あいつが作ったやつだと、ちょっと怖くありません?」
その言葉に頷くことも否定することも出来ず、曖昧に笑っておいた。
すると、教室の後ろから千秋と由加の声が聞こえた。
「なにこれ、めっちゃ美味い!ぱねぇ!」
「美味しい…。」
由加の手には古市君のチョコレートが握られていた。その声を聞いた古市君が、得意そうに言った。
「お菓子作りは得意なんですよ。」
すると、神崎がずっと気になっていたことを聞いてくれた。
「つーか、何でいきなりこんなもん作ってきたんだよ?」
古市君はきょとんとして、さも当たり前のように返した。
「だって今日はバレンタインじゃないですか。」
その言葉に全員が目を丸くした。
女子から男子に渡す本命チョコや、女子同士で渡しあう友チョコならまだしも、男子が友チョコを渡しているのなんて初めて見たからだ。
「あ、妹に手伝わされただけですよ。それで、どうせやるならみんなに作っていこうかなーって思ったんです。」
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バレンタインボツネタ。
このあと、みんなにチョコを渡す古市に、男鹿が怒って、実は男鹿には本命チョコあるよーっていうバカップルを書こうとしましたが、中々男鹿を出すところまで辿り着けず挫折。