※古市が聖石矢魔の生徒です
昼休みになり、皆がお昼を食べようとした時、いきなり教室の扉が開いた。
「こんの…バカオーガっ!!」
そう叫びながら、教室に飛び込んで来た銀髪の聖石矢魔の生徒は男鹿の頭をひっぱたいた。
「!!!」
その場にいる誰もが、驚いた。あの男鹿に、見知らぬ男子―しかも聖石矢魔の生徒―が叩いたのだ。しかもバカオーガという暴言付きで。
「何しやがんだ、古市!」
男鹿はその少年を仰ぎ見ると、古市と呼んだ。どうやら知り合いではあるらしい。
「それはこっちの台詞だ!お前、山村君に変なこと教えただろうが!!」
「はぁ、カズ?カズがどうかしたのかよ?」
「どうしたもこうしたもないだろ!自分で山村君に何言ったこと覚えてないのか?!何で覚えてないんだ?!だからお前は馬鹿なんだよこのバカオーガ!!」
「あぁ?!古市こそ何だよ、馬鹿馬鹿言いやがって!そういうてめーの方がアホだろうがアホアホアホ市!!!!」
激化しそうな二人の言い争いに、待ったをかけたのは邦枝だった。
「ちょ、ちょっと!男鹿!止めなさい!!それと、古市…君?あなたも一体どうしたの?」
そう声を掛けると、古市は邦枝に向き直り、今まで男鹿と口論をしていたとは思えないほどの笑顔で言った。
「わぁ!石矢魔にもこんな美しい方がいたなんて!古市貴之と言います。以後お見知りおきを。」
「は、はぁ…。」
それに反応したのは、寧々の方だった。
「おい!姐さんに気安く触ってんじゃねぇ!」
古市の胸倉を掴み上げ、言い放った。
普通だったら、ここで竦み上がり土下座の一つでもしてしまいそうな程の迫力だったが、あの男鹿の顔を見慣れている古市には、美しいお姉さんがこんな至近距離で話し掛けてくれるなんて!くらいにしか感じなかった。
そしてその気持ちは、そのまま顔に現れていた。
「何笑ってんだ、てめぇ!」
その笑い方に、馬鹿にされたと思った寧々は拳を振り上げた。
「寧々!止めなさい!」
邦枝が叫んだが、一瞬遅く、振り上げられた拳は古市の顔を殴りつけ―るつもりだった。
古市に当たるはずだった拳は、男鹿が寧々の腕を掴み取ることで当たらずにすんだ。
「止めろ。」
言葉はたったの三文字。しかし、怒気を含んだ声と鋭い視線に射止められた寧々は動けずにいた。一瞬で教室が緊迫した空気に変わった。
ところが、それを感じ取れない―否、わざとなのか―古市が呑気な声を上げた。
「おい男鹿!俺とお姉さんが話してるところを邪魔すんな!」
その言葉に脱力した男鹿―を含む教室にいた全員―が、古市を見た。
「ったく、お前のせいで何回デートに失敗してると思ってんだ!」
「へーへー。」
男鹿はすっかりいつもの調子である。ただ一つ、いつもとは違うところがある。
が、それに気付いたのは、数人である。
「ったく、これだから馬鹿男鹿は…。」
「んだと、アホ市。」
いつものように見える男鹿だが、古市を見つめる瞳はいつもと違い、まるで大切な恋人を見るような愛しげな表情だった。
―――――
古市は何のために石矢魔教室に来たのでしょう((
男鹿にも大切な人くらいいるよ!っていうのが書きたかった。石矢魔にいると古市と男鹿はセットになっちゃうけど、別々の学校だったら他の人は知らないよね!みたいな感じです分かりませんねすみません。←←