「古市、大丈夫か?」

「は、だ、いじょ、ぶ…はぁ。」

今日は石矢魔の強歩大会の日。男鹿と俺は一緒に走っていた。いつも不良から逃げているので、足には自信があったのだが、体力が伴わなかった。
毎日喧嘩ばかりしている不良共には、どんどん抜かされていく。
不良共が真面目に走っているのは、校長が「頑張った奴にはご褒美をあげよう」とか言ったからだ。そんな一言で頑張ってしまうところが、石矢魔らしい。
そんなわけで、男鹿と二人で走っているのだが、どう見ても俺が足手まといになっている。男鹿はまだ息も上がっていない。くそ、男鹿のくせに。

「まだ、はぁ、がんば、る。」

「…そうか。」

頑張るとは言ったものの、正直辛い。脇腹も痛ければ、足も痛い。自分が歩いているのが、不思議なくらいだ。

「歩くか?」

「いい。は、いいから、男鹿は、はぁ、走ってけ。」

「お前置いていけるわけないだろ。」

「うっせ、はぁ。いいか、ら、いけ、は。」

「…じゃぁ行くぞ。」

「おう。」

その言葉を合図に、男鹿は走り出し、俺は歩き始めた。
歩いていると、後ろから来た神崎先輩一派や、クイーン達にも抜かされてしまった。
抜かして行く人もいなくなり、周りに歩いている人もいなくなって、本当に一人になっちまったなぁと思っていた。同時に自分が世界で一人になってしまったような気がして、泣きたくなった。男鹿はきっと、俺を抜かして行った神崎先輩一派やクイーン達と喋りながら走っているんだろうな、とかなんで俺は一人でいるんだろうな、とかなんで本当に置いてったんだよ、とか。



折り返し地点にやってきた。
やっと帰れると思っていたら、見慣れた人影が見えた。

「おせーんだよ、アホ古市。」

「!誰も、待ってろなんて、言ってないだろ。」

「強がんなよ。」

そう言うと、男鹿は俺の頬を拭った。

「一人は、辛いだろ。」





結局、俺の体力の限界で最後まで走ることはなかったけれど、ゴールした時にみんなが迎えてくれて、また泣きそうになってしまった。





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強歩大会だったのは私です(^p^)
競歩ではなく、強歩なので走ってもオッケーなんです。
一人置いてってしまった友達に申し訳なく思いまして((
一人は辛いよね古市…!((

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