お昼を食べ終えて屋上から教室に戻ると、そこは戦場と化していた。

「フランスパンが!」

「フランスパンじゃねぇっつってんだろ!」

神崎先輩と姫川先輩が喧嘩をしていた。しかもあの石矢魔の奴らだ。誰ひとりとして止めることなく、机を退かしたりむしろ協力体制である。何があったのか、たった今教室に戻ったばかりの俺達には分からなかったので喧嘩の被害が及ばない様に、扉の近くに立っていた夏目先輩に聞いてみることにした。

「夏目先輩、何があったんですか?」

「古市君。あのね、神崎君がお昼を食べようとしたら、たまたまいた姫ちゃんが神崎君のお弁当を馬鹿にしたんだ。で、それに怒った神崎君が姫ちゃんに喧嘩を吹っ掛けて今、って感じ。本当面白いよね〜、あの二人。」

くすくす笑いながら説明してくれた。俺は曖昧に笑って、戦場と化した教室の真ん中に、普通に入っていった男鹿の後を追った。

「おい男鹿!危ねぇだろ!」

「別に気にしなくていいだろ。」

「気にしろよ!」

そして自分の席に腰を下ろした。男鹿の机で話していると、いつの間にかお互いに武器を取り出しさっきよりも大変なことになっている。いつもは諌めてくれる女子達も、お昼時とあって出払っている。ここ教室ってこと忘れてません?今さらこの人達に言ったところで、無駄なのだろうが。
しかしヒートアップする二人を止める人は誰もいない。おいおい、誰か止めろよ。俺?こんな弱っちい奴が止めに入ったところで、やられるのがオチです。さてどうしたものか、と考えていると、神崎先輩の持っていたヨーグルッチが俺目掛けて飛んできた。

「うわっ!」

咄嗟のことで避けられず、腕を上げて体を守った。少し掛かってしまったが、これくらいならハンカチで拭けばどうにかなる。ポケットからハンカチを取り出そうと探っていたら、自分の席で寝ようとしていた男鹿が突然立ち上がった。

「てめぇら…!」

そしてそのまま、喧嘩に加わろうとしたものだから俺は慌てて止めた。

「やめろ馬鹿!お前まで入ったら収拾つかなくなるだろ!先輩達もそろそろ止めて下さい!」

すると今までお互いに向いていた敵意が、俺に向けられた。

「あぁ?古市、てめぇ誰に向かって言ってんだ?」

「そうだぜ。あんま調子のんなよ?」

神崎先輩と姫川先輩に睨まれて、少し逃げ腰になっていると神崎先輩の腕に擦り傷があるのを見つけた。

「神崎先輩、擦りむいてますよ。」

「あぁ?こんなん傷のうちに入んねぇよ。」

そう言って再び喧嘩を始めようとしたので、慌てて止めた。

「何言ってるんですか!擦り傷だって化膿したら、大変なことになるんですよ?手当てするので、ちょっと座ってください。」

神崎先輩が座るのにそこら辺に転がっていた椅子を持ってくると、嫌そうな顔をした。

「あぁ?大丈夫だって言ってんだろ。」

「いいから座ってください!」

少し怒った様に言ったら、あっさり座った。神崎先輩だから反発されて殴られたらどうしようと思ったが、殴られなくて良かった。
鞄の中から救急セットを取り出し、軽く消毒をしてから絆創膏を貼る。そんなに大きな傷ではなかったので、簡単に終わった。

「はい、終わりです。」

「あ、おぅ。ありがとな…。」

神崎先輩は少し目線を逸らしながらも、お礼を言ってくれた。少しだけ顔が赤いように見えるが、こんな大勢の前で俺に手当てをされたことが恥ずかしかったんだろうな、と思った。
「ふるい「おい、古市。俺も手当てしろ。」

神崎先輩が言うのに被さるように、姫川先輩が言った。

「姫川先輩も怪我してるんですか?」

見たところ傷をしているようには見えない。

「あー、ここ打った。」

そう言ってズボンをたくしあげ、足を見せた。そこには小さな痣が出来ていた。

「あ、本当ですね。湿布貼っておきますか?」

「おう、頼むわ。おい、てめぇどけ。」

姫川先輩は神崎先輩をどかすと、椅子に座って足を出した。





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どうやって古市総受けにもっていこうとしたのか、全く分からなくなったボツネタ。
自分の考えが分からない←

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