自販機に飲み物を買いに行ったら、あまり会いたくない奴に会ってしまった。

「あ、男鹿!」

三木久也。バレー対決が終わってから無駄に懐かれている。会う度に話し掛けられるので、正直会いたくないと思っている。自販機は聖石矢魔の教室棟と、石矢魔の特別教室を繋ぐ棟の間にあるので、普段よりも会う確率が上がるので正直飲み物など買いに来たくなかったが、べる坊のミルクを持ってくるのを忘れたため牛乳を買いに来るはめになってしまった。
会わなければいいなと思っていたのだがどういう因果だろうか、会ってしまった。なんて最悪な運命だろう。

「…おぉ。」

「珍しいね、こんなところで会うなんて!」

キラキラした目でこっちを見てくる。止めてほしい。背中のべる坊もうめき声を上げている。

「三木君じゃん。知り合い?」
すると三木の後ろから声がした。

「古市先生!そうなんです、男鹿って言うんです!」

見るとそこには、銀髪にスーツを着た男が立っていた。三木が先生と呼んでいるので先生なのだろうが、童顔なのか生徒と変わらないように見える。

「あぁ、男鹿って君か〜!今聖石矢魔の方でも人気あるから、名前だけは聞いてるよ。」

「…っす。」

何と言っていいのか分からず、とりあえず返事をした。
多分少し動揺してたんだと思う。今まで、先生なんて俺の顔を見ただけでビビって逃げていく。こんな風に話せる先生など、初めてだった。

「…てめぇは俺が怖くねぇのかよ。」

「俺?」

聞き返されたので、頷いた。三木など怖がるどころか懐いている。お前以外に誰がいるんだ。

「俺も石矢魔出身だから、慣れてんだよね。それに石矢魔だからって悪い奴ばっかじゃないだろ?」

たまには危ない奴もいるけど。

そう答えてそいつは笑った。

その笑顔がとても綺麗に見えた。

何故か鼓動が早くなった。

「…お前、名前は?」

「古市貴之。」

古市貴之、古市貴之、古市貴之。よし覚えた。

「あ、そろそろ予鈴鳴るから二人とも戻った方がいいんじゃない?」

「やば、次移動だ!男鹿またね!」

三木が行くのと一緒に、古市が行こうとしたので慌てて呼び止めた。

「っ、古市!」

「先生はつけてほしいかな…。何?」

苦笑しながらも応えてくれた。

「また会えるよな?!」

「そりゃあ聖石矢魔にいる間はね。」

「っ、またな!」

「おぅ、またな。」

そう言って、今度こそ古市は行ってしまった。
たったそれだけのやり取りなのに、異常なくらい顔が熱くなった。

これからは頻繁に自販機に来ようと思った。





―――――

やっちゃいました、古市先生。男鹿は古市先生に惚れたので、これから猛烈アタックします。でも古市は可愛い生徒しか思ってないんだけど、いつからか意識するようになればいいと思います。
古市の担当教科は多分国語。

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