「次の方、どうぞ。」

「古市ー、怪我した。治せ。」

「またあなたですか…。」

前の患者の診察が終わり、次の患者を呼ぶと入ってきたのは男鹿辰巳。しょっちゅう怪我をしては、この病院に来る。最早常連と化している。

「今日はどうしたんですか?」

「だから怪我したっつってんだろ。アホめ、アホ古市。」

「だからどこを怪我したんですかって聞いてるんです。」

「ここ。」

そう言って足を指差した。

「だから怪我したところを見せろって言ってるんです…!」

男鹿はあまり一般常識と言うものがない。他の患者には一回で伝わるようなことも、男鹿には中々伝わらない。

「あぁ…はい。」

ようやく伝わったようで、男鹿が作業着の裾を捲ると見えたのは、皮膚が大きく裂け血が流れ出ている足だった。

「ちょ、応急処置してないんですか!」

予想外の怪我の大きさに驚いた。

「あぁ。親方がとりあえず病院行けっつーから。」

男鹿は大工をしている。だが大抵の場合は、男鹿が趣味と称している喧嘩で傷を作ることが多い。
喧嘩で作る傷は、体中に出来るが一つ一つは小さいものだから処置をするのは簡単だ。もっとも、医者という職業をしているこちらからすれば、怪我をするようなことはなるべく止めてほしいと言うのが本音だが。



「…痛くないんですか?」

いつもよりも大きな怪我に不安を抱き、処置をしながら聞くと

「あんまり。」

と、男鹿は答えた。

「…痛覚がないのは大変なことですよ。動物は痛いという感覚で、体の危険を教えてるんです。だから痛みを感じないというのは、いけないんです。」

「…そうなのか。」

男鹿は多分理解してないだろうが、神妙そうな顔で頷いた。

「だから、自分の体は大切にして下さい。」

「古市が言うならそうする。」

「…手当は終わりました。」

「おう。いつもサンキューな。」

そう言って、男鹿が俺の頭にぽんと手を乗せた。

男鹿の手の温かさに安心して、なぜだか胸がキューっとした。




―――――

パロって初かもしれない…。一応男鹿→←古。男鹿は古市が好きですが、古市は自覚してない。古市が男鹿に敬語を使うのを書くのが、地味に楽しかったです(笑)
ちなみに親方は早乙女先生。
※知識はあやふやなので信じないで下さい。

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