06
最近は登校は一緒でも、男鹿と帰ることが少なかったから久しぶりに男鹿と帰れるということで、放課後に近づくにつれ俺の気分は良くなっていった。
しかし思わぬ邪魔が入った。
やっと授業が終わり、男鹿と帰り支度をしていた時。
「あれ?男鹿の携帯鳴ってね?」
自分の携帯以外のバイブが鳴っているのが聞こえた。教室にはすでに誰もいなかったので、自分のでは無いならば男鹿のであるはずだ。
「…む?あぁ、わりぃ。」
そういって男鹿は廊下に出た。どうやら電話だったらしい。
男鹿が電話をしている間に支度が済んだので、携帯を弄りながら待っていると男鹿が戻ってきた。
「男鹿ぁ、早く帰ろうぜ。」
俺が上機嫌に言うのとは裏腹に、男鹿は険しい表情で俺に言った。
「悪い。今日一緒に帰れなくなった。」
「…え?」
驚いて声が出ない。
「あいつ、捕まっちまったみたいであいつの携帯から電話繋かってきて…。」
あいつと言うのは男鹿の彼女のことだ。男鹿を呼ぶのに彼女は最適なのだろう。
きっとこれからは俺ではなく、彼女の携帯からの着信が増えるだろう。
「何言ってんだよ!俺なんてどうでもいいから早く彼女んとこ行ってやれよ!」
俺が一喝してやると男鹿は決したように勢いよく鞄を掴み、駆け出した。
「明日は絶対帰るからな!」
教室を出る瞬間に言い残していった。
「期待させるようなこと言うなよな…。」
俺は一人、教室に残された。
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