03
「なんか二人で帰るのって変な感じだね〜。」
「そうですね。」
断る理由もなかったので、結局夏目さんと帰ることにした。
きっと一人だったら、男鹿は彼女とどっか行ってんだろうなとか考えてしまうからむしろ良かったかもしれない。
「そういえばさ、最近男鹿ちゃん彼女出来たよね?」
「そうですね。」
「辛くないの?」
「どういう意味ですか?」
「だって古市君、男鹿ちゃんのこと好きなんでしょ。」
これには驚いたなんてものじゃない。
どういうことだ。
俺はこの気持ちを誰にも言ったことがないし、ばれているとは思いもしなかった。
「そんなことあるわけないじゃないですか。男同士ですよ?」
「別に男同士だっていいじゃない。そもそも俺が古市君が男鹿ちゃんのこと
好きだって気づいたのは、古市君のことが好きだからだよ?」
「…はい?」
何なんだ。
一体何なんだこの人は。
俺をからかって遊んでいるのか。
「さっきから夏目さんの言っていることの意味が分からないんですけど。」
「だーかーらぁ、古市君は男鹿ちゃんのことが好きで、俺はそんな古市君のことが好きってこと。」
「夏目さん、意味わかんないです。」
「そのまんまの意味だって。俺は古市君が好きなの。恋愛対象としてね。」
「突然そんなこと言われても困りますよ。」
「だって困らせるために言ったんだから。」
本当に分からない。
今日の夏目さんはどうかしてるらしい。
「それなら言いますが、俺は男鹿のこと好きですよ。」
「やっぱり。」
「何で知ってて告白したんですか?」
「だって今古市君の好きな人には恋人がいる。で、弱っている。そこにつけこまない馬鹿いないでしょ。」
つけこんでること言っていいのか。
「そんなこと言われても無理です。」
「分かってるよ、そんなこと。だからこれは宣戦布告。」
そういいながら夏目さんは俺に顔を近づけた。
「絶対に俺のこと好きにさせる。」
夏目さんと少しの間、見つめ合う形になった。
「ま、今日はこれだけ言えれば良かったから。また明日ね〜。」
「あ、さようなら。」
そう言って手を振りながら去っていった。よく見たら、すでに俺の家の前に着いていた。
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