02
男鹿に彼女が出来てから一週間が経った。
この一週間で変わったこと。
携帯をいじることが滅多にないあの男鹿が、メールをしているのを見かけるようになったこと。
男鹿と一緒に帰ることが少なくなったこと。
それに比例して、男鹿と彼女が一緒にいるのをよく見かけるようになったこと。
俺の男鹿への恋情が日増しに増えていること。
さらに彼女への嫉妬が大きくなっていること。
それから、それから。
数えだしたらキリがない。
とりあえず分かったのは、男鹿の彼女が可愛いことと、俺が汚いことだけだった。
だってそうだろう?
こんな風に男鹿の彼女に嫉妬して、俺の場所を彼女に取られたことに苛立って。
きっとこんなだから男鹿にも好きになってもらえないんだろうな。
「古市。」
「男鹿。どうしたの?」
「悪い。今日一緒に帰れねぇ。」
「あー、はいはい。全くラブラブで困るなぁ。」
「うっせ。」
今は昼休みで、俺と男鹿はいつも通り屋上に来ていた。
俺も男鹿も弁当なんてとっくに食べ終わっていて、べる坊も満腹になったらしく男鹿の横ですやすや眠っている。
こんな可愛い赤ん坊が魔王だなんて信じられないな。
平穏とは言い難いが少なくとも、俺の周囲は平穏だった一日は終わり放課後になった。
「じゃあ俺行くな。」
「おう、じゃーな。」
男鹿が彼女と一緒に帰るときは絶対に先に帰らない。
だって男鹿の彼女なんて見たら、きっと俺の醜い嫉妬を全てぶちまけてしまうだろうから。
一緒のところは見たくないから、男鹿が帰ってから一時間以上経ってから帰路につこうと決めている。
一時間が経ったので帰ろうと思い立ち上がると夏目さんが入ってきた。
「あれ、古市君まだいたんだ。」
「夏目さんこそ。どうしたんですか?」
「ちょっとね。古市君は?」
「俺は男鹿が彼女と帰るって言うんで一人寂しく残ってたんです。」
言ってからおかしいことに気づいた。だったら一時間も待ってないで男鹿より先に帰ればいいのに。
しかし夏目さんは俺がどれほど長く教室に残っていたのか知らないので、特に気にしていないようだった。
「…じゃぁ、俺帰りますね。」よく分からない不思議な沈黙が流れたので先に口火を切ることにした。
「あ、待って古市君。」
「何ですか?」
予想外に呼び止められ驚いた。
しかし次に続いた言葉にはさらに驚いた。
「一緒に帰らない?」
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