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次の日の昼休み。
「古市、行くぞ。」
「おう。」
いつものように屋上に行こうとしたら、後ろから腕が伸びてきて、そのまま抱きしめられた。
「だーめ。古市君は俺と食べるんだよ、ね?」
「夏目先輩…!」
肩越しに後ろを振り向くと、夏目先輩と目が合った。
アイコンタクトされたが、正直どう反応したらいいのか分からない。
「…そうか。悪かったな。」
どうしようかと俺が考えているうちに、男鹿はさっさと教室を出てしまった。
「それじゃ、俺達も食べよっか。」
夏目先輩に連れられて来たのは、石矢魔特別教室が設置されている棟の空き教室だった。
「…夏目先輩、いきなり何するんですか。」
教室に入るなり聞くと、夏目先輩は飄々とした顔で答えた。
「何って、協力だよ。」
「いきなりあんな事されても困ります。」
夏目先輩は椅子に座りお昼を食べる体制になっていたが、俺は扉の前から動けなかった。
お昼だけは誰にも邪魔されず、二人だけで過ごすことが出来るのに、その時間を邪魔されたのだ。
「まあまあ、そうピリピリしないでご飯食べようよ。ね?」
なんでもない様に机を叩いて、俺を促す。何を考えているのか分からない表情に苛立ったが、この先輩はそういう人だったと思い、今さら何を言っても仕方がないので、机にお昼を置き、近くにあった椅子を引き寄せて座った。
「次からは妙なアドリブしないでくださいね。」
「はーい。」
どこか上機嫌な夏目先輩に一つ溜め息をついて、パンのビニールを開けた。
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