白亜様へ相互お礼文
学校帰り、いつも通り男鹿の家に寄った。特に何をしようとも決めていなかったので、ゲームをしている男鹿の後ろで、ベッドに潜りながら携帯をいじる。
「古市ここは。」
「そこは何もないから、そのまま行っていい。」
馬鹿なくせにRPGをやりたがるので、逐一俺に聞いてくるのだ。
「だー。」
「べる坊触んな。」
ゲームに集中している男鹿の側で、べる坊がやりたそうにコントローラーに手を伸ばした。しかしバトルの真っ最中で、べる坊に渡したらここで切れてしまう。マメにセーブをしない男鹿は、バトルで負けると大分前まで戻ってしまうのだ。
「うー…。」
するとべる坊が少し涙目になった。
こんなところで泣かれたら、俺まで電撃の餌食になってしまう。それは何としても避けたい。
仕方なく、携帯を置いて起き上がる。そしてベッドから身を乗り出して、手を伸ばし、べる坊を抱き上げた。
「べる坊、俺と遊ぶか。」
「だ!」
元気よく手を挙げたべる坊に胸の辺りがほっこりして、何となく怠かった気持ちが吹き飛んだ。
「よし!じゃあ何する?」
「だ!だぶ!」
そう聞くと、べる坊は俺に向かって手を伸ばしてきた。「抱っこか?」
「だぶ!」
そうだ、と言うように顔を縦に動かしたので、脇に手を差し込み持ち上げてやる。
「べる坊はあったかいなー。」
寒がりの俺は、ストーブが一つ点いているだけの部屋ではまだ寒いので布団に潜っているというのに、男鹿はいつものよく分からない単語が書いてあるTシャツに、スウェットを履いているだけだ。それに比べ、学校帰りなので制服とマフラーはそのまま、正直コートも着ていたかったがコートを着ると寝転びづらいのでコートは脱ぎ、代わりに布団に包まっていた。
そこにべる坊のような子供体温の赤ん坊は、暖かくてありがたい。
その暖かさを分けてもらうように、ほお擦りをした。
「ほっぺも柔らかいし。赤ん坊っていいな〜。」
「だっ!」
言っていることは伝わっていないだろうが、雰囲気で分かったのかべる坊が誇らしげな顔をする。
「べる坊すごいぞ。」
文脈はよく分からないけれど、褒めてほしそうだったので、褒めてやることにした。
温かさを無くすのが惜しくて、べる坊を抱きしめていると、横から手が伸びてきて、べる坊を取られてしまった。
「あ!返せ!」
「うるせぇ。」
男鹿はべる坊をそのままクッションの上に置いて、ベッドに乗り上げてきた。そして俺に向かって倒れ込んできた。その力に俺が敵うはずもなく、俺も一緒に倒れ込むことになった。
「うわ!」
倒れ込んだ男鹿が俺を抱きしめてきたので、男鹿と密着するような体制になった。
「何すんだよ。」
呆れて言ってやれば、男鹿は腕の力を強くした。
「…俺だって、暖かいだろ。」
「そりゃあ…。」
確かに男鹿は暖かい。中学生の時は、寒いとよく男鹿に抱き着いていた。しかしこの頃はべる坊がいるし、べる坊の方が抱き心地が良い。そして何より、男子高校生がいくら寒いと言っても、抱き着くのは良くない、と思ったのだ。
「いきなり何だよ?ゲームはいいのか?」
「飽きた。」
男鹿の答えに呆れてため息をつく。
前RPGをやった時にも、飽きたから止めると言って、いきなりゲームを切っていたことがあった。
「もうお前、RPGやるの止めろよ…。」
「うるせぇ。たまにやりたくなるんだよ。」
「…あ。」
そこで、ふと思いついた。
「もしかしてお前、構ってほしかったわけ?」
上を見上げて男鹿の顔を見ると、真っ赤になっていた。
「そ、そんなわけねぇだろ!」
「そーかそーか。俺がべる坊ばっか構ってたから、寂しかったんだな〜。」
ニヤニヤしながら言ってやれば、男鹿が俺の後頭部を掴んで強く抱え込んだ。
「ぶ!」
「ちげぇっつってんだろ!」
顔は見えなくなったけど、目の前に広がる男鹿の服の色と鼻腔をくすぐる男鹿の匂いに満たされて、背中に腕を回した。
「はいはい、分かったから。」
「っ、だから!」
「とりあえず一緒に寝るか。」
俺の言葉に男鹿はため息をついた。ため息をつきたいのはこっちの方だっつーの。こんなでかい赤ん坊がいて。
「…古市。」
「なんだよ…。」
男鹿に抱きしめられていると、何となく安心して、本当に眠くなってきた。
眠たげに答えたら、男鹿が俺を少し離して耳に口を近づけ言ってきた。
「お前、俺に抱きしめられてると、安心するだろ。」
「なっ!」
今度は俺が顔を赤くする番だった。
前言撤回、でかい赤ん坊じゃなくて俺の幼なじみで親友で大好きな恋人でした。
寒がりの季節(あー、これが幸せってやつ?)
白亜さん、ものすっっっごく遅くなってすみませんでした!
えっと、何だか甘えたと男前受けみたいになりそうだったので、最後は男鹿さんにかっこよくなってもらいました。
今さらですが、相互ありがとうございました!
こんな私ですが、これからもよろしくお願いします(^^)
白亜さんのみお持ち帰り可能です。
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