前
私は邦枝葵。
石矢魔東邦神姫の一角を担っている。そしてレッドテイルの元総長。元が重要なのだ。私がレッドテイルを抜けた原因は、男鹿辰巳である。
私は男鹿辰巳を好きになってしまったのだ。傍若無人、人を人とも思わない、土下座(させるの)が趣味。けど本当は優しくて、人の為に自分を犠牲に出来る。
そんな彼を好きになってしまった。
だから聖石矢魔に行くことになって、教室が一緒で、さらに隣の席になれた時はとても嬉しかった。聖石矢魔に通うのも慣れて、彼の隣に座るのも慣れてきた頃。
それは起きた。
朝、教室に入り自分の席に着いていると、男鹿が勢いよく教室に入って来た。
「おい、古市来てるか。」
その声に周りを見回すが見当たらなかった。
「いないけど。」
「くそっ、どこだよ…!」
すると校舎の外から声が聞こえた。
「男鹿く〜ん。あ〜そび〜ましょ。」
窓から外を見てみると、他校の生徒のヤンキーがたくさんいた。さらに一番前にいる奴は銀髪―古市貴之が捕まっていた。
「早くしないと男鹿君の大事なお友達が傷ついちゃうよ〜?」
そう言いながら男は古市の頬にナイフを当てた。しかし古市は動じた様子もなく
「男鹿〜。早くしろー。俺の顔に傷がつくだろ。」
などと呑気そうに叫んでいる。
男鹿は男の声が聞こえると同時に教室を飛び出していた。下を見ると、男鹿が玄関から出てくるところだった。
玄関から飛び出すと大勢のヤンキー共が立っていた。その先頭に立つ男は古市を捕まえていてそれを見た瞬間、頭に血が上り男に殴りかかっていた。
「古市に触ってんじゃねぇよ!」
一発殴ると男は綺麗に吹っ飛んだ。周りにいたヤンキーはあっという間に逃げていった。そこには古市が突っ立っているだけだった。
「あー、怖かった。ったく、さっさと助けに来いよ。」
「無茶言ってんな!つーか、朝っぱらから捕まってんじゃねぇよ。」
「だって家出た瞬間に捕まってさ。まぁ男鹿が気づけば助けに来てくれると思ったし。」
けどまさか自分達から男鹿の前に行くとは思わなかったわ。そう言って古市は笑った。
くそ、こっちがどんだけ心配したかも知らないで。
「うお!」
イラついたので古市の腕を掴み、自分の方に引き寄せそのまま抱きしめた。
「俺がどれだけ心配したと思ってんだよ…。」