短編 | ナノ

君に伝える愛言葉

前を見ると、机に突っ伏して寝ている男鹿が見えた。
聖石矢魔がテスト週間に入り、ならば石矢魔クラスでもテストをやろうか、という話になった。





と言っても、あの石矢魔の人達がテストをきちんと受けるのかと言われれば、受ける気のないやつが八割、受ける気はあるけど勉強してこないやつが一割、残りが勉強をしてテストに臨むやつに別れた。
男鹿は八割、俺はもちろん残りの一割の中に含まれている。そもそもテスト中に寝るというのがありえない、といつもなら思うのだが、さすがにこのテストは石矢魔生を舐めすぎだと思います。
何故高校生のテストに足し算、引き算、掛け算、割り算の問題があるのか。こんな問題、開始から十分で解き終わるぞ。
そんなわけで暇を持て余した俺は、俺が解き終わる前から既に寝る体制に入っていた男鹿の背中を見つめていた。
周りをちらりと見れば、テスト中にも関わらず答えの教え合いをしている生徒や、話している生徒がほとんどだった。
監督者などおらず、黒板に大きく「テスト終了後、教壇の上に置く。」とだけ書いてあった。
俺はシャーペンの先をしまい、男鹿の背中に当てる。そのまま数秒待ったが起きる気配が無かったので、シャーペンを動かした。





くだらない言葉から、いつも言えないけれど伝えたかった言葉をたくさん書いた。実際伝わってはいないのだろう、男鹿は寝ているから。
けれど俺はそれで満足して、さて他に何を書こうかと考えていたら、テスト終了のチャイムが鳴った。
タイミング良く、男鹿が起きた。

「やっと起きたか。」

「…お前なぁ。」

男鹿は肩越しにこちらを振り返ると、再び前に向き直り、ノートを取り出した。どうやら何か書いているようだったが、よく分からなかったので、男鹿の作業が終わるのを待っていると、男鹿はこちらを向いて、折り畳んだ紙を渡してきた。

「なにこれ?」

「読めよ。」

言われるままに開いて、中に書いてある言葉を読んだ。

「…!お、前、起きてたんなら言え!」

「誰も寝てるなんて言ってないだろ。」

「うるせぇ!馬鹿男鹿!」





「あーあ、男鹿ちゃん達また痴話喧嘩始めたね。」

「また何やってんだか…。」

はぁ、と神崎は一つため息をつくと、ヨーグルッチを飲んだ。

「古市君も『好き』くらい、直接言えばいいのに。」

「んなこと書いてたのかよ。」

「うん。手の動き見てたら分かっちゃった。」

人の良さそうな笑顔をしていながら、この中で誰よりも腹黒いのはこいつだろうなぁ。と、神崎は考えていた。





―――――

背中に何か当たって反応しないって、男鹿さんぱねぇっす←


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