そうして世界は終結した
朝、いつもより静かな家に違和感を覚え時間を確認すれば、学校に行かなければいけない時間をとうに過ぎていた。
何故、誰も起こしに来ないのか、不思議に思いながらリビングへ向かった。
するとそこには、体中真っ赤にして倒れている家族の姿があった。
「な、んだよ…これ。」
皆俯せに倒れているから、表情は分からなかった。ただ、こんなに静かなのに、聞こえてくるのはつけっぱなしになっていたテレビの音と、自分の呼吸する音だけだった。
堪らなくなって外に飛び出すと、血で赤く染まった人、人、人。動いている人など、一人もいない。近所のおばさんも、散歩中だったおじいさんも、誰も動かない。
足が震えて動けない。
「…!」
その時、数メートル先の曲がり角から人が出てきた。
「あ、男鹿!」
古市だった。
やっと生きている人に出会えたことと、それが幼なじみであったことに安心して、すぐに駆け寄った。古市もこちらに駆け寄ってきて、そのまま抱き着いてきた。
「ふるい…ち?」
腹の辺りに違和感を感じた。
「やっと見つけた!お前、中々見つからないんだもん。手、こんなんなっちゃったよ。」
古市が見せてきた手は真っ赤に汚れていた。
「どういう…ことだ…。」
腹が痛い。
喧嘩している時のように、殴られたような痛みではなかった。
腹に手を当てると、血がべったりと付いた。
「だってさ、みんなが俺のことおかしい、って言うんだもん。俺は男鹿のことが大好きなだけなのに。」
古市は俺の腹に手を伸ばし、刺さっていたナイフを引き抜いた。
「だから、みんな殺しちゃった。」
「何で…?」
視界がぼやける。古市が口を開くのが見えた。
「 」
言葉を聞き取る前に、世界が暗転した。
何も見えなくなる前に残った思考で、そういえばべる坊は何処に行ったんだろうと思った。
「お…!…が!男鹿!起きろ馬鹿男鹿!」
目を開けると、幼なじみが俺を起こしていた。
「!」
勢いよく起き上がると、古市は驚いたようで、後ろにのけ反った。
「うわ。どうしたんだよ?」
「何でもない…。」
きょとんとしている古市の顔を見つめても、あの異様な感じはしない。
あれは夢だったのか。
そう気付いて、一気に安堵して、再びベッドに寝転んだ。
「おい寝んな!」
「あ〜?疲れてんだよ、こっちは。」
「ずっと寝てたやつが言うな!」
古市に背を向けるようにして、寝返りをうつ。
「うるせーな。こっちはみんな死ぬわ、お前が殺してるわ、お前に殺されるわで大変だったんだよ。」
「何だそれ!夢か?」
「そうだよ。」
「馬鹿じゃねぇの、俺がそんなことするわけねぇだろ!」
古市が笑うのが、気配で分かった。
あぁ、そうだ。これだ。これが普通だよな。
「俺だったら…。」
古市が急に静かになったので、顔だけで後ろを振り返る。
「…古市?」
「こうするからな。」
ドスッと音がして、腹にカッターが刺さるのが見えた。
「?!」
「俺がそんな馬鹿みたいなこと、するわけないだろ?やるなら、男鹿一人で充分だ。」
「ふる…いち?」
先程までの雰囲気が消え失せた古市は、俺が夢で見たあいつとそっくりだった。
「俺が男鹿のこと好きって、いつ気付いてたんだ?第六感みたいなやつか?まぁ、男鹿だしな。まさか、今日に限ってそんな夢見るなんて、魔王の親だからか?」
はは、と古市が笑う。
視界がぼやける。
「何で…。」
喋るのと同時に口から血が飛び出した。
「何で?そんなの 」
古市の言葉が聞こえる前に視界が暗転した。
何処かでべる坊の泣き声が聞こえた気がした。
―――――
衝動のままに書きました。病んでる古市なんですが、あんまり表現出来なかった…。
ヤンデレを上手く書けるようになりたいです。