会いに行けたらいいのに
「あ。」
「た、かしま…先輩。」
ふらっと出掛けたコンビニで、珍しい銀髪の後輩に会った。
「お前んち、ここら辺だったっけ?」
「いえ、違いますけど、こっちの店の方が品揃えいいんすよ。」
そう言って古市は、雑誌をぱらりとめくった。
俺を見た瞬間、逃げ出そうとしたやつとは思えないくらい、今は普通に接している。絶対に何もしないから大丈夫だ。と、何の根拠があるのか分からない俺の言葉に古市は頷いて、今こうして一緒にいる。と言っても、並んで立ち読みしているだけだが。
「高島先輩んちはこっちなんすか?」
視線は雑誌から離さずに、古市が尋ねてきた。
「あぁ、まーな。」
ちら、と盗み見ても、古市は一度もこちらを見ない。
そりゃそうか。土下座させられたやつと、何が楽しくて二人で仲良く立ち読みしてんだ、って感じだよな。
そんなことを考えてたら、古市と目が合った。
「さっきから何ですか?めっちゃ視線感じるんですけど。」
そう言って古市は笑った。そのあどけない表情に、無性に嬉しくなった。こんな俺にも笑いかけてくれることが。頬に熱が集まる。
「それじゃあ、俺そろそろ行かないといけないんで。アイス買ってこいって言われたんで。」
誰に、なんて聞かなくても分かった。
一人で文句を言いながら雑誌を置いて、アイスのコーナーに向かう古市の腕を掴んだ。
「なあ!」
「何ですか?」
古市は目を開いた。掴んだ手首から、震えているのが伝わる。きっとずっと俺の隣にいるのが、怖かったんだろう。
「また、こっち来るか…?」
腕を掴んだ時とは反対に、声がどんどん小さくなる。
「気が向けば、来ますよ。」
「また会えるか?」
「…会おうと思えば、会えるんじゃないですか。」
「じゃあ」
「古市!」
最後の言葉を口にしようとした瞬間、コンビニに裸の赤ん坊を背負った男が飛び込んできた。
「男鹿。」
古市は俺とはまるで何もなかったかのように、男鹿に歩み寄った。
掴んでいた腕はするりと抜けていった。
「遅いから探しに来てやったんだぞ。何してんだ。」
男鹿がギロリとこちらを睨んだ。んな睨まなくても、何もしてねぇつーの。
「お前が食いたいっつったアイスが無かったから、わざわざこっちまで来てやったんだろ。」
「もういいから帰るぞ。」
男鹿が古市の手を握って、古市もそれを握り返したのを俺は見た。そこから目を逸らすように、雑誌を置いて、何か違うものを見に行こうとした
「あ、高島先輩。」
ら、コンビニから出ていく瞬間、古市が声を掛けてきた。
男鹿が見るからに不機嫌な顔になった。
「俺、別に怖くないっすよ。」
それじゃあ。
古市はそれだけ言うと、男鹿に引っ張られるように帰っていった。
無性にイライラして、結局何も買わずにコンビニを後にした。
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一応、おがふる←高です。
古市が好きな高島と、高島が怖いけど普通になるようにしてる古市、高島が嫌いな男鹿、です。一応。あんまり古←高が出てないなぁ。
書きたいことがまとまらず書きはじめたら、こんな結果になりました(∵)
古市と高島を絡ませたかっただけなんですが、玉砕。