短編 | ナノ


古市に電話して、今日は俺が古市の家に行くことを告げれば特に何も言わず了承した。





「ひな人形?」

「おう。」

電話口では古市の家に行くことを言っただけで、べる坊がひな人形を見たいと言っていたことは言わなかった。

「あー…そういや今年出してなかったわ。」

「マジかよ!」

古市の家で出してなかったということは七段のひな人形が見れないと言うことだ。それを聞いて、テンションの上がっていたべる坊だったが今にも泣き出しそうになった。

「すぐ出せねぇのか?」

焦りながら聞いたが古市は呑気に返した。

「んー…俺いまいち分からないんだよな。今日母さんの帰り遅いから、明日また来いよ。」

そう言われてべる坊を見れば、明日見れると言うことで納得したのか先程までの泣き出しそうな雰囲気はなくなっていたので昨日は帰った。






そして現在。

念願叶って七段のひな人形が見れたべる坊は、大変嬉しそうに手を挙げはしゃいでいる。そんな様子を見るのが珍しいのか、古市はべる坊にこの人形が何で、など熱心に教えている。言っても分からないだろうに。まあ、俺が説明出来るわけないのである意味良かったか。それにしても暇だ。

そもそも俺はひな人形を見に来たのではなく、古市と遊びに来たのだ。

それなのに古市はべる坊に付きっきりで、一向に俺と遊ぶなんて気配ではない。ったく、何のためにわざわざ家まで来てやったと思ってるんだアホ市め。

思ったことをそのまま口に出してやると、古市はただでさえ大きな目をこれ以上ないってくらい大きく開けて、頬を真っ赤にした。

「…何だよ。」

何か変なことを言っただろうか、と思い古市に声を掛ければ

「お前恥ずかしくねぇのか。」

と、返された。何がだと思っていれば、古市はさらに続けた。

「それ、べる坊に嫉妬してるってことじゃねぇの?」

…は?
いやいや、何を言ってるんだ。確かにべる坊にばかり構っている古市を見るのは何だかもやもやしたが、嫉妬なんてことはない。

そう言えば古市は

「…自覚なしかよ。」

と、呆れたように呟いた。
しかしその顔には恥ずかしさと嬉しさが浮かんでいた。何で嬉しそうなんだ?と、思っていると

「しょうがねぇなぁ。」

と言って手招きをしたので古市の方に寄っていき、べる坊と一緒に古市によるべる坊のためのひな人形講座を聞いた。古市は男なのに無駄にひな人形に詳しく、全てを説明し終わるころにはべる坊は寝ていた。

「べる坊寝ちゃったな。」

「そうだな。」

古市はべる坊を座布団の上に寝かせると、タオルケットを掛けてやった。クーラーがきいているのでそこまで寒くはない。これで二人で遊べると思ったら

「ふぁ〜、何かべる坊見てたら俺も眠くなってきた。」

と言ってべる坊の横に寝転んだ。

「おい!」

「男鹿、うるせぇぞ。べる坊起きちゃうだろ。」

泣かれては困るので、いくらか声量を落として古市に言う。

「ゲームの続きやらねぇのかよ。」

「ん〜…それより寝ようぜ。」

ほら、と言ってべる坊と反対側を手で叩いた。

「ったく、しょうがねぇな。」

そう言ってから古市の叩いたところへ寝転び、古市の顔をじーっと見た。

古市の顔は中性的で目は大きいし、睫毛も長い。紅い唇は白い肌の中でとても綺麗でふっくらしていて甘そうだ。



そして気付いた時には古市にキスをしていた。幸い古市は寝ていたようで、俺がキスをしたことに気付いていないようだ。こんなことをしたのがばれたら古市に怒られるだろう。けれど、自分でも何故キスなどしてしまったのだろうと不思議でしょうがない。考えても答えなど出るはずがないので、起きたら古市に聞いてみようと思う。それまで俺も一緒に寝よう。重力に任せて瞼を閉じた。





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前では男鹿古にしようか男鹿→古にしようか迷っていて、表記なしとなってますが男鹿→←古です。しかし男鹿は無自覚。キス大したことないのか男鹿よ←
っていうかひな人形に詳しいのに、組み立て出来ない古市…←

続編とかは苦手らしいです←
精進します…。気が向いたら古市目線でも書いてみようかな…。気が向いたらですけどね^^←

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