二度目のこの日
「ねえ、コウキは何も教えてくれないの?」
「え?何を?」
「「騎士団の会議の事さ」」
ハリーとロンが口を揃えて言うものだから、少したじろぐ。
「今は簡単に口に出せる事なんて無いの。それに私は実戦側だから、あまり隠密側の話を聞かされていないし」
「ずるいなあ…」
「私は一応大人だし、騎士団の戦力なんだから」
「そうだけどさ…ヴォルデモートはコウキの何を求めているの?」
「簡単に言えば私の持つ特殊能力かな。私の全てを手に入れたとしたら、不老不死に限りなく近い存在になれるから」
「そうか。コウキは外見を変えたり体を作れるから、年を取らないんだ」
「上手く使いこなせばアバダ ケダブラを回避できる方法もあるしね」
ヴォルデモート自身も私の力を欲していると言っていたし、現に数回吸収もされている。だが、本当にそうなのだろうか?奴は、力を持つ魂が欲しいのではなく―――失ってしまったあの人の魂と共に居たいのではないかと、そんな気もするのだ。
「みんな、教科書のリストが届いたわよ」
「わ、本当?」
一足先に、学校へ行く準備が出来ていたハーマイオニーが下から手紙を持ってきた。
「新しい教科書は2冊だけだ」
「何だか…今年の防衛術は面白く無さそう」
「どうして?」
「見て、防衛術理論。今更だし…何より、杖を使うより本で勉強しなさいって雰囲気がぷんぷんする」
「そんなの、ヴォルデモートに対する力を付けられないんじゃ?」
「うん、何か…嫌な予感」
「わ、やめてよ。コウキの嫌な予感、外れる事を知らないんだから」
うえ、とハリーと顔を見合わせていた時、ハーマイオニーが会話に参加しないロンに声を掛けた。
「ロン?どうしたの?」
「か…」
「か?」
ロンの持っている羊皮紙を覗き込むと、そこには"監督生"の文字があった。
「監督生?わあ、ロン、監督生じゃない」
「あ、わ、私もだわ!」
「じゃあ、ハリーとコウキは!」
「僕、違う」
「私も違うよ」
その言葉に、ハーマイオニーとロンが硬直する。
その少しの沈黙を破ったのはウィーズリーおばさんだった。
「みんな、教科書リストを見せてね。午後からダイアゴン横丁に行って来るわ」
「あ、ママ…」
「何?どうかしたの?」
「ロンが、監督生に選ばれたのよ」
私がそう言うと、おばさんまでも一瞬固まり、そして次いでロンに飛びついた。
「信じられない!ロン、素晴らしいわ!」
「ママ、落ちついてよ…!」
ハーマイオニーも一緒になって喜んでいたが、ハリーはやはり重たい空気を背負っていた。ロンが欲しいものをおばさんに伝える為に、部屋を出て行った。
「ハリー?」
「おめでとう、ハーマイオニー」
「ありがとう―――あの、ヘドウィグを借りてもいい?」
「うん、いいよ。使って」
ヘドウィグを連れ、ハーマイオニーが部屋から出て行った所で、ハリーはベッドに座り込んだ。相当ショックなのだろう。自分が選ばれなかったと、自分は優れていないのかと。
「ハリー、違うでしょ?」
「…僕」
「優れてるとか、優れてないとか。そういう事じゃないよ」
「でも」
「…ロンが、悪いわけじゃない」
「ハリーが監督生じゃなくたって、勇敢で心の優しい人である事に変わりは無いんだし。ね?」
「コウキ…」
「自分で言うのもなんだけど、勉強も出来る、実技も出来る、力もある、あのダンブルドアの娘の私が監督生じゃないんだよ?よっぽど問題児じゃない」
そう言った所でやっとハリーも笑ってくれた。
「私達には、もっと大きく重い試練が待っているんだよ」
「そうだね…そうだった」
ロンが戻って来た所で、再び二人でお祝いの言葉をかけた。
パーティの準備が完了した頃、リーマス、トンクス、キングズリー、ムーディが屋敷にやってきた。
「私は監督生になったことなかったな」
ロンの話を聞き、トンクスが監督生の話を始める。
「シリウスは?」
「誰が俺を監督生にする?リーマスは優等生だったから選ばれたが」
「ダンブルドアは、私が君達を止める事を期待したんだよ。そんな事は出来なかったけれどね」
あの頃のジェームズとシリウスを実質止められたのはリリーだけだろう。是非とも6,7年ですっかり落ち着いたというジェームズを見たかった。
「私も一応監督生だったんだけど、大してそれらしい事できなかったなあ」
「どうして?」
「5年生になった最初の方でいなくなったの。ジェームズを減点するのが夢だったのに」
「え?お父さんは監督生じゃなかったの?」
「勿論。シリウスとしょっちゅう罰則受けてるような生徒だったからね」
「そうだったんだ…」
ハリーはそう言うと、心なしか嬉しそうな顔で皿に料理を盛り始めた。ジェームズと同じだと思うと、心が晴れたのだろう。
「コウキ」
「うん?」
「君も監督生ではなかったんだね」
「多分、ハリーと同じ理由だとは思うけれど」
「ダンブルドアも、程々君には甘いね」
「私の待遇と金庫を見れば、大いに」
確かに、とリーマスが笑い、私の心も晴れたのだった。
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