不死鳥のように

ここは古びた洋館。
人の暖かみを忘れたこの場所に、一人また一人。
生きた意志は集結していた。

「重大発表をしようと思うんだけど」
「なんだい?」
「…私の正体を、騎士団の皆に伝えようかと」

不死鳥の騎士団の本部となったブラック家の屋敷。そこに私が出入りするようになったのは、学校が休みになってすぐの事だった。

「…そう、か―――うん、そうかもしれないね」
「動きにくいっていうのもあるけど…騎士団にも入れてもらえないでしょ?」
「コウキ、」
「大丈夫だよ。その方がリーマスと一緒に行動できるし、私がやらなきゃいけない事だもの」

理解はしてもらえないかもしれない。下手をすれば皆の信用を失いかねない。でも、そんな事を言っている場合で無くなったのも事実だ。私の力は、騎士団の役に立つ。

そう思い、私はリーマスと共に家を出てこの屋敷へと足を踏み入れた。

「会議を始めましょう。さあ、コウキは部屋に―――」
「ちょっと待ってくれないか、モリー」
「どうしたの?リーマス」
「話があるんだ」
「私、皆に言わなくちゃいけない事があるの」

その言葉に、シリウスとアルバスが反応した。シリウスは少し複雑な表情を見せていたけれど、アルバスはしっかりと私の目を見て頷いた。

「信じられない事かもしれないけど…ええと、どこから話したらいいか…」
「そうじゃの、では姿を見せてくれないかな?」

アルバスの言葉を受け、本当の年齢を示す姿に変わった。

「変身術?」
「変身術、に近いものです。これが…本当の私の姿です」

あまりにも唐突過ぎただろうか。
ゆっくりと、私が初めてホグワーツに訪れた時からの足跡を辿る様に話始めた。

「じゃあ…貴女は、一度殺されて…?」
「はい、そう…なります」

本当はリーマス達と同学年で、少しの間ホグワーツにいた事。ヴォルデモートと対峙し、この世界から一度いなくなり、再び戻って来た事。私は言わばヴォルデモートを倒す為に作られたもので、特殊な能力を持っている事。
断片的ではあるが、簡単に纏め話を終えた。

「ずっと黙っていて、ごめんなさい。ヴォルデモートが復活して、私の力を利用して貰おうと思ったの。本当の事をみんなに言わなきゃ、騎士団の力にもなれないと思って…」

その場を沈黙が埋める。
私の後ろに立っていたリーマスが、私の肩を抱く衣擦れの音だけが静かに空気を震わせた。

「…ここに、貴女を否定する人などいないわ」
「おばさん…」
「よく―――生きていましたね」
「っ…ありがとう、ございます」
「そんな重荷を背負って、生きていたのね…これからも…それを」
「私、きっと力になります」

私を抱き締めるおばさんの後ろで、アルバスが静かに立ち上がった。

「コウキよ。表向きは学生なのじゃ、絶対に無理をしてはいけん」
「はい」
「リーマス、頼んだぞ」
「勿論です」

それから行われた会議は、随分と遅くまで続いた。今後気を付けるべきは、今アズカバンに収容されているデスイーターの存在と、放たれたままのデスイーターを把握する事だ。ムーディの事で痛感したが、少数精鋭がその力を発揮しただけでホグワーツにも危機が訪れるのだ。

「ハリーには、必要以上の事は言ってはいけないとしても、何故ダーズリー家に帰らなくてはいけないのかくらい、教えてはいけないの?」
「そうじゃ」
「私もそうだけど、何も知らされずにそこに留まる事は出来ない」
「今は動いてはならんのじゃ」

私の意見は何回言っても聞き入れられる事は無かった。今はリリーの血縁の傍に居なくてはならない事はわかっている。だが、少しでもハリーの気持ちを汲み取ってあげないと爆発しかねない。

「え…あれ、コウキ!?」
「久し振りだね、ハーマイオニー、ロン」

数日後、二人が屋敷にやってきた。
私の姿を見た二人は、思わず大声を出しあの煩い肖像画を起こしてしまった。

「だって…え?もしかして、皆に言ったのかい?」
「こうして面倒な事になった以上、あのままだと動きにくいでしょ?」
「そうだけど…じゃあ、もう学校には戻ってこないの!?」
「ううん、今だけ。私がまたホグワーツに通っているのは、卒業したいからだしね」
「そっか、そうだったね…よかったあ」

何度も会議があり、大人達は何度もこの屋敷を出入りした。のだが…

「…私って友達居ない人みたい」
「仕方ないだろ?お前は退学扱いだったわけだし」
「そうだけどさ…」
「あの時ばっかりは、お前の体も情報も無いまま消えてしまったからな。ダンブルドアにもどうしようも無かったんだろう」
「やめてよその遠い目。昔の人みたいに扱わないでよね」
「あの頃のお前を知ってる奴とばったり会ったら、どうすんだ?」
「あー?そうだな…私、病気で編入だったじゃない?だから、また病気が再発して、アルバスが気を利かせて退学にしたってどうよ」
「どうよ、って今考えたのかよ」
「そんなの、どうとでもなるって」

私とシリウスは、かなりの確立で屋敷にお留守番。
シリウスはやはりアズカバンに入っていた所為もあり、まだ顔良く見られてはいないから(アルバスの本意はそうではないだろうが)。
私は、さっき言っていたように、顔見知りがいないからだ。もしかしたら私達は…実戦にならないと役に立たないかもしれない。

「ていうかあんたむさくるしいよ。その髭剃れよ」
「何でお前に指図されなきゃいけねえんだよ」
「あ、何。もしかしてちょっと若く見えるの気にしてるんだ」
「うるせえな」
「童顔だとばかり思ってたリーマスが今やダンディジェントルマンだもんね」
「うるせーって言ってんだろうが」
「シリウスはまともな食生活でイケメンに戻ったしね。昔と顔全然変わってないんじゃない?童顔というか…昔がもう濃かったのかな?」
「濃かったとか言うな!」
「ちょっとコウキ!シリウス!ケンカするより手を動かして!」
「すみません!」
「ったく…巻き添えにすんな」
「なにー!?」
「こら!」
「「はい!」」

今私達が行っているのはこの屋敷の掃除。埃が舞うのでは無く、べっとりと貼り付く状態を経験したのは初めてだ。

「コウキとシリウス、ルーピン先生がいなかったらやりたい放題って感じだよね」
「見かけばっかり大きくなった子供みたいな…」

ハーマイオニーとロンにすらこんな事を言われる始末。非常に不甲斐ないが、まともな大人の階段を上れなかった私達だ。多目に見て頂きたい。

「ねえ、どうしてコウキは魔法使えるの?」
「見た目はあれでも、成人こえてるからね。どういう仕組みで未成年者を見分けているかわからないけど、私はスルーみたいだよ」
「いいなあ…」
「まあ、これでもいい歳だからねえ」
「おばさんだもんな」
「言ったなこら。鳥頭のくせに」
「そういう所はいつまで経ってもガキだな」
「ガキで結構ですー。リーマスがそれでいいって言ってくれるからシリウスに何言われてもへのかっぱー」
「むかっつく…!」
「うるさい!」
「「すみません!」」

暗く生気の感じられなかった屋敷は、こうして日々明るい声が響くようになったとさ。

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