世話焼き

ホグズミード行きの当日、私とハリーは昼頃に三本の箒でハーマイオニーと落ち合う約束をし、解散した。

「セドリック、こんな事を言うのもアレだけど、本当に私でよかったの?」
「何がだい?」
「その…ホグズミードに」
「君がいいから、誘ったんだろう?さあ、行こう」
「う、うん…」

セドリックの表情はいつもと変わらずだ。昨日、彼のポーカーフェイスが崩れたのは見間違いだったのだろうか?そんなはずはない、しっかりとこの目で見たのだから。


「何処か行きたいところはある?」
「あ、お昼頃に三本の箒でハーマイオニーと会う約束をしてて」
「わかった。じゃあ他に用事は無いかな?」
「ええ」

セドリックはにこりと笑って歩き出した。ゆっくりとハイストリートを歩いていると、様々な店の窓にでかでかとポスターが貼ってあるのに気がついた。その内容は、アズカバンから脱獄したデスイーターの事だった。

「彼らはどうして脱獄できたと思う?本当にシリウス・ブラックが手引きしたと?」
「思わないわ。関わったのは例のあの人…そして吸魂鬼だと」
「吸魂鬼が寝返った?」
「奴にとっては、簡単な事だと思う。きっと、魔法省が吸魂鬼を制御できなくなってるのよ」
「このままだと、本当に…」
「第二の暗黒時代ね」

沈黙の間、私はずっとベラトリックス・レストレンジと目が合っていた。
シリウスの親戚…か。

「それにしても」
「うん?」
「君は本当に頭が良い。度胸もあって勇敢で、グリフィンドールに適しているのかもしれないけれど、どうしてレイブンクローにならなかったのかな」
「有り難い話だけど、私は根からのグリフィンドールだと思うよ」
「まさに完璧なグリフィンドール?」
「はは、そんな事ない」

二人で笑いながらポスターの前を後にした。みんなが笑っていられる世界を壊すなんて、そんな事は許さない。その気持ちは変わらない。

「ねえセドリック」
「なんだい?」
「私に何か、話があったんじゃないの?」
「…どうして?」
「そう思ったから、じゃ…駄目?」
「よくわかったね。流石だよ」
「どういたしまして」

しばらくホグズミードを練り歩き、雨に降られてしまったところを丁度目の前にあった喫茶店へと入った。

中はカップルの巣窟…ふりふりでかわいらしい女の子の喜ぶ喫茶店、と言ったところだ。少しためらわれる状況ではあったが、酷く大粒の雨に当たってまで他の店を探す気にはならなかったので、仕方なしとしよう。私とセドリックは小さなお店の一番奥、あまり周囲から気にならない位置に腰掛けた。もちろん、セドリックが話しやすいようにの計らいだ。

「それで?」
「うーん…君の事だから、大体わかっているんだろう?」
「え?ええ…多分」
「うん、チョウの事なんだ」
「そもそも、どうして別れる事になってしまったの?」
「些細な喧嘩だったんだ。きっとチョウは、僕に嫉妬させるつもりだったのかもしれない」
「ハリーの話を?」
「ああ。少し、ややこしい話になってしまって、それなら、僕と別れてハリーと付き合えばいいと」
「セドリックに好きな人が出来たとか…聞いたわよ?」
「それはチョウの勘違いさ」

うーん…う、うーん…。これは、ちゃんと話し合いをすれば、仲直りするんじゃないのかな…?ハリーには申し訳ないけど、やっぱりチョウが影でセドリックを気にしてるのは気付いていたし、些細な喧嘩で別れたのなら、その分の絆は太いままじゃない?

「話、してみれば?」
「やっぱりそうだよね」
「ええ。ちゃんと冷静に話し合わないと、お互いの気持ちもわからないでしょ?」
「確かに、そうだね。でも…チョウは僕の事を避けてるみたいで、なかなか捕まらないんだ」
「チャンスを待つしか無いね」

実は、ハリーとチョウが喫茶店に入って来ていた。セドリックは背中を向けているから気付かなかったみたいだけれど、入り口周辺に座った二人は私からは一直線だ。そして先ほどから雰囲気がよくないのも丸見えで…。

「ハリー、じゃ、さよなら!」

チョウがそう叫んで店から出て行った。その声にセドリックも反応する。

「ハリーには悪いけど…それに」
「勿論行ってよ。セドリックを一人占めする気なんてないもの」
「…ありがとう、コウキ」

そう言って呆然とするハリーの前を通って店から出て行った。ごめんよハリー…!

「やっぱり、チョウはまだセドリックの事が好きだったんだね」
「…き、きっとね」
「そんな感じはしてたんだけど…ね」
「…」
「…」

空気が重い!
少し早いけれど、とりあえず私達はハーマイオニーと待ち合わせしている三本の箒へと向かった。

prev / next

戻る

[ 100/126 ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -