微睡みの中

クリスマス休暇に入る少し前、私はホグワーツから姿を消した。全てを残し、何一つ残さずに。

再び訪れた時は、暖かな懐中時計が進めている。静かに、優しい音で、私の時を進めている。

「コウキ」

まだ霧のかかる早朝のような白さが、私の視界を鈍らせている。その中に薄らと映るリーマス。手を伸ばし、触れる。抱き締めればじわりと伝わる体温。
夢にしてはとても暖かなリーマスの存在。それはいつでも私の心の支えになっている。夢ならばもう少し贅沢を、と引き寄せた唇に自分を重ねた。

「朝から積極的だね」
「…うわあ!」
「おはよう、コウキ」
「わ、え、あれ…リーマス!」

クリスマスの朝、折角現れたリーマスを前にムードもへったくれもない起床。夢の幻影かと思ったのだが、夢現な自分が見ていた紛れもない本物だったようだ。

「いつここに?」
「つい先程。まだ寝てるだろうと思ってね、覗いてみたらお熱い歓迎を受けたよ」
「ゆ、夢だと思ったんだもの…」
「夢でなくても大歓迎さ」

嬉しいよと付け足して、ベッドの足元に転がるクリスマスプレゼントを渡してくれた。

「わ、すごいいっぱい。もう大人だってわかってるから、みんなくれないかと思ったのに」
「そんな事は無いよ。君は君なんだから」
「プレゼントって、いくつになっても嬉しいな」
「そうだね。でも、私は君に貰うプレゼントが一番嬉しい」

そう言って差し出されたのはリーマスからのクリスマスプレゼント。こっちの世界ではプレゼントはベッドやツリーの下にあるのが主流だが、やはり手渡しに勝るものはないだろう。

「ありがとう、開けても?」
「もちろん」

包みから出てきたのはネックレスだった。きらりと光る宝石は、ふくろうの瞳を思い出す色。朝陽に照らされ優しい色を反射させる。宝石が填まっている部分を裏返せば、私とリーマスのイニシャルが彫られていた。

「ありがとうリーマス、大切にする」
「君を守ってくれるように、籠めてあるから」
「ん、ずっとしておく」

金具を外すと、リーマスがネックレスを受け取り首に回す。胸に収まった時、リーマスの背中に手を伸ばし強く抱き締めた。頭から背に向け優しく撫でる大きな手。この手から伝わる体温は、私を安心させてくれるのだ。いつまでもそうしていて欲しいと、願う程に。

「大変だったね」
「そうでもないよ。私より―――」
「しーっ」
「え?」
「今だけは、私の事だけを見ててくれるかな?」
「…リーマスのやきもち」
「何とでも言ってくれて構わないよ」

くすくすと笑って再び私はベッドへと倒れ込んだ。今度は、リーマスと一緒に。

「そろそろ、みんな起きてくるね」
「押し倒しておいて、それ?」
「先に誘ったのはコウキだけど?」
「さ、誘ってないってば…」

このまま微睡みに身を任せてしまっては、恥ずかしい姿を晒してしまいかねない。リーマスの添い寝で二度寝、という最大級の贅沢に後ろ髪退かれながら重たい体を起こした。

「さ、行こう」
「ああ、そうだね」

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