企み

「我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり」

昔はジェームズ達と一緒にこの地図を使い、今はハリー達と一緒に使っている。非常に面白い人生だ。

「オーケー、それじゃあ、必要な事に集中して、ここを3回行ったり来たりする」
「はいよ」

バカのバーナバスの絵が飾ってある向かいの壁。そこに必要の部屋は現れる。この間、間一髪で逃げ切ったシリウスが教えてくれた部屋だ。

「コウキ!見て!」
「え?うわあ…」

先程まではただの壁だったそこに、ピカピカに磨き上げられた真鍮の取っ手の付いた扉が聳え立っていた。
中は松明に照らされた広い部屋が広がっており、沢山の本棚やムーディが使っている様な道具など、とにかく私達が学ぶのに必要なものが揃っていた。

「すごい…これ、全部防衛術に関する本だよ…」
「素晴らしいわ!ここには欲しいものが全部ある!」
「このクッション、失神術を練習する時に使えるな」

それぞれ部屋を見回しているところでノックの音が響き、続々とメンバーが集まって来た。皆部屋の設備に驚いた様子で、興奮を隠し切れずにいる。

「それじゃあ、リーダーを選出しましょう」
「え、コウキじゃないの?」
「え、ハリーじゃないの?」

私とハリーの声が被る。
思わず顔を見合せ笑った。

「ちゃんと投票するべきだと思うの」
「あー。じゃあ、僕かコウキ以外で、リーダーをやった方がいいって人、いる?」

ハリーが皆へ向けてそう言うと、誰も挙手せず首を横に振っていた。

「僕は能力的にも、経験的にもコウキがリーダーになるべきだと思う」
「じゃあ、ハリーはサブリーダー。それでいいかしら?」
「僕はその方がいいよ。コウキはそれでいい?」
「わかった。全力を尽くすね」

リーダーは満場一致で決定。
次はチーム名。

「魔法省が一番恐いのはダンブルドア軍団でしょう?だから、DAなんてどう?」
「いいね!リーダーもダンブルドアだしね」
「DAに賛成の人?」
「大多数です、動議は可決!」

ダンブルドア軍団―――
私達にとって、一番の心の支えとなるアルバス。何があっても私はこの名前を守ろう。

「じゃあ―――まずは、武装解除かな」
「おいおい、例のあの人に対してそんなのが効くのかい?」
「まずは基礎。基礎が出来ていれば今後も困らないし、うまく使えれば誰にだって効く呪文よ」
「僕はこれで奴とやり合った。間違いないよ」
「じゃあ、全員二人一組になって練習しよう」

一人余ったネビルとハリーが組み、私は皆を見て回った。はじめ!の合図で空中を杖が飛び交い、部屋は大混乱だ。どこを見てもお粗末な呪文が飛び交っていて、これは基礎から初めて正解だったとハリーと言葉を交わした。

「なあコウキ、ちょっと一緒にやってくれよ」
「え?ああ、いいよ」

そう声をかけてきたのはザカリアス・スミス。
ホッグズヘッドでロンと睨み合っていた子だ。軽く往なして高い鼻を折った方がいいかもしれないと、私は手を広げ隙だらけの格好をして見せた。

「エクスペリアームス!」
「よっ」

杖を持った右手を軽く上げれば、放たれた閃光は弾かれ高い天井へと吸い込まれていった。

「発音は悪くないね。ただもっと、相手の武器を、自由を奪うんだって強い意思を持って唱えないと効果は薄れちゃうよ」
「な…そんなのアリ?無言呪文が出来るなんて」
「大いに有り。さ、練習してね」

近くで練習をしていたメンバーが拍手を送ってくれた。状況を把握していない離れたメンバーにも注目され始め、何だか照れ臭くなってくる。

「なあ、コウキとハリーで本気の決闘を見せてくれないか?」
「ええ?」
「武装解除が凄いんだって事、教えて欲しい!」

確かに見本があるのはいい事だが、まさかそんな展開になるとは。

「わかった。やろう、コウキ」
「怪我しない程度にね」

肩を竦め、ハリーと距離を置く。ハーマイオニーが私達を中心に円を描き、「危ないからもう少し下がって。ええ、そこでいいわ」防御呪文を唱えた。随分大掛かりだが、ハリーは本気の目をしている。まあ確かに必要かもしれない。ロンの合図で杖を構え、空気がピリッと肌を弾いた。

「…」

どく、どく。
自分の心音だけが聞こえる。
互いに杖を向けたまま、決して目を反らさない。一瞬の隙も許されない事を知っている私達は、一つとして相手の動きを見逃さなかった。ハリーの頬を伝った汗が床に落ちた時、空気が震えた。

「エクスペリアームス!」

ほぼ同時に放たれた閃光は互いに掠り、バチンと激しい音を鳴らし左右に飛び散った。どよめきにハリーは一瞬目を反らす。私はその隙を逃さなかった。
突き出した杖を瞬時に引き寄せ、もう一度弧を描くように放ったそれは勢いを落とさずハリーへと当たり、吹っ飛んだハリーが床に倒れる時―――私は二本の杖を手にしていた。

「な、なんだ、今の…」
「何が起こった…?」
「大丈夫?ハリー」
「いてて…何とかね」

私とロンでハリーを支え起こした。良かった、怪我は無いようだ。

「流石だよコウキ、一瞬だった」
「ハリーも全然隙を見せないから、ちょっと焦っちゃった」

ハリーと手を取り合った時、再び拍手が巻き起こった。最初の興奮を取り戻したメンバーは、声を掛けずとも再びペアを作り、練習を始める。効果抜群だったようだ。

次はハリーが見回り、私はネビルと組んだ。楽しいと思うことが勉学の始まりだと告げると、段々と自信が付いて来たのか、調子を上げていった。

「コウキ、そろそろ時間じゃないかな」
「そうだね。注目ー!」
「来週の水曜日にもう一度集合しよう。時間の調整もその時しようか」

それから、忍びの地図を見ながら小人数ずつ外へと出し、最終確認を終えてから私達もグリフィンドール寮へと戻った。

「今日はよかったわ。貴方達は流石ね」
「あの決闘、ゾクゾクしたよ」
「あれは私もゾクゾクしたわ」

この調子でいけば、なんとかやっていく事が出来るだろう。興味を引き、経験を重ねる事でそれは身に付いていく。咄嗟に反応出来るようになれば上出来だ。

「それじゃあ、おやすみ」
「また明日」

ハリー、ロンと別れ、女子寮への階段をあがっている時、ふと昨日の事を思い出した。
ヴォルデモートは何に歓喜していたのだろう。奴が喜ぶ事で、私達も喜ばしい事など何一つ無い。決して良い知らせでは無いそれを、私は飲み込みベッドへと潜り込んだ。

prev / next

戻る

[ 92/126 ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -