悪魔の手
セブルスの部屋であのまま気を失っていたらしい。
目が覚めたのは翌日の朝、場所は医務室だった。
「ここには、誰が?」
「スネイプ先生ですよ。最近貧血気味だったとか。女の子は仕方無いですが、余り無理をしないようになさい」
授業を終え、自室に戻って倒れた私を見たセブルスはどんな表情だったのだろう。そしてどの様にここまで運んできたのだろう。驚き、一瞬でも焦っただろう姿を思い浮かべて鼻から空気が抜けた。
失礼。そんなつもりは。
セブルスに迷惑を掛けたい訳でも、心配させたい訳でも無いのだが、何だろう。自責の念に駆られる彼の気を紛らわせているつもりなのだろうか?
セブルスに対してだけは、迷惑を掛けるという意識が甘い気がする。甘え過ぎかもしれない。自重しなければ。
「起きたか」
「あ、ごめん」
「謝っているつもりか?それは」
「言ってから軽いなと自分でも思った」
「自覚があるだけ脳が人間のレベルではあるようだ」
早速自重出来ていないが、もういっその事心底心配するだけ無駄と思って頂けた方がいいかもしれない。謎の液体が入ったゴブレットをベッドサイドに置き、さっさと医務室から出て行ってしまった。
入れ換わるように次はハリー達が乗り込んできた。
「コウキ、大丈夫?」
「うん、心配かけてごめんね」
「スネイプと何があったの?君を抱えて医務室に向かうスネイプを見たって人がいるんだ」
「あの傷を診てくれたの。その後寝ちゃったみたいでこの様」
「なんだ、驚いたよ…」
「そのまま寝かせてはくれなかったみたい」
「叩き起こされなかったのが不思議なくらいじゃないか」
「だから意外と優しいんだって。それで…何かあったの?」
息を切らせて入ってきたのだ、何か大切な話があったのではと切り出す。すると、思い出した様にあっと声を上げ、ハリーの顔が青くなった。
「アンブリッジに、シリウスの事がバレたかもしれない!」
「どういう事?」
昨日の晩、シリウスが前回と同じように暖炉に現れ、最初は何事も無く会話をしていた。しかし急にシリウスが消え、続いて暖炉から伸びる一本の手。それは、紛れも無いアンブリッジの手だった。シリウスが其処にいた事をわかっているかのように、その手は何かを掴もうとしていた―――と。
「…やっぱり、ヘドウィグを襲ったのはアンブリッジだったって事ね」
「ええ、私もそうとしか考えられないわ…」
今この状況でも十分に苦しいというのに、確信の持てないヴォルデモートの話までするわけにはいかないだろう。
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