『君もポケモン…ううん…トモダチ、なの?』 彼は私がなくした純粋な目で、真っ直ぐに私を見て言った。 きみの名は_2 「…い……」 「ん……」 「お客様!起きてください!」 「うわあっ!?」 飛び起きてはじめに見えたのは、にこりと満面の笑みを浮かべた船員だった。 「え…え?」 「ミキ様、イッシュ屈指の巨大都市ヒウンシティへ到着いたしました」 「あ…ありがとうございます…」 言いながらあたりを見回し、ようやく自分が客船に乗っていたのだということを思い出して、また船員へと顔を戻す。見た先は相変わらずの笑顔だった。普段は絶対に声を荒げない接客業の人に、こんなにも叫ばせたということは、よほど私は寝入っていたのだろう。 私が状況を認識したことを確認した彼は、営業スマイルを崩さないまま一礼して客室を出て行った。それをまだ覚醒しきらない頭で見送ると、ゆっくりと体を起こす。窓から注ぐ光に目をやれば、港とその向こうに広がるビル群が望めた。 「イッシュか…」 長く、旅をしてきた。様々な地方へ行った。当てもなく、決して楽ではない旅を、ただ目的のために。 それでも続けて来たのはなぜだったか。 少し感傷に浸りかけたところで、カタカタとボールが音を立てた。そういえばとそれに手を伸ばすと同時、自分の腹も空腹を訴える。そして、当たり前だと苦笑した。昨夜は遅くまでバトルを挑まれて疲れ果て、何も食べずにベッドに倒れこんだのだ、当然の結果だろう。 「よし、支度するから、待ってて」 まずはシャワーだと準備をしながら、未だ文句を言い続けているボール達をなだめた。 「これはすごいなあ」 聳えるビルを見上げて感嘆すると、傍らにいるエアームドが同意するように頷いた。道ゆく人はみな忙しなく、それでいて、私達を横目で見て行く。それにお構いなしに、お上りさん全開で一頻り眺めたあと、街をまわるべく歩きだした。後ろにかしゃかしゃと足音が続く。 「すごいねえ、エアームド」 語りかけると、嬉しそうな声が答えた。しかし、連れ歩くのが珍しいのか、それともあまりみないポケモンだからか。相変わらずの視線にため息をつく。 人は、どこに行ってもそうなのだ。これほどに発展して、文化的な生活をしている人々でさえ、好奇心という悪意の目を向ける。今更気にしたことはなかったし、それを知ってか仲間の彼らも気にした風はなかったけれど。 「いいもんじゃないよね、エアームド」 不思議そうな顔をしたあとに、察したのか私の前へと走って出た。そして私をまっすぐに見てにやりと笑う。 「…よし、行こうか」 そう同じ顔をして返すと、私は彼らを引き連れて路地裏へと歩き出した。 |