サニーサイドアップ

「あ、もしかしてごはん派でしたか？」

名前との同棲生活（名前は居候だと言うけど）が始まって数日後の朝、彼女はトーストを齧る手を止めて言った。

「ご飯が多いけど、朝早いときはパンかな。……どうして？」
「やっぱり？あんまりトースター使われてる痕跡がなかったら……それに、作る身としてはカカシさんの好みに合わせたいなあって……」

名前は申し訳無さそうにはにかんで言った。名前が家に来てから食事担当は専ら彼女なのである。居候の身で何もしないのは気が引けるという名前の提案だった。

オレが作った魚の煮付を食べた名前は「待って、カカシさん料理上手すぎ！知ってたらご飯作るなんて言わなかったのに…！」とぷりぷりしていたけれど、名前は料理上手だった。
料理の腕前はさることながら、相手の好みを的確に判断するのが天才的に上手かった。

「ほんと、よく見てるよね。」
「あはは、職業病みたいなもんです。」

肩を竦めて笑う名前に、そういえば彼女の接客も絶妙なタイミングを逃さなかったなあ、と思いだした。

「そ？気も利くし、料理も上手だし、このまま嫁に来てほしいくらいだよ。」

冗談交じりに微笑みかけると、名前は真っ赤な顔をして齧りかけのトーストを落としそうになっていた。

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