すたーふぇすてぃばる



いつものように白鳥宮で皆が思い思いのことをしていたときのことだった。

ふとバイオレットが「あ」と小さく声をあげた。

「どうしたんだ?」
「んーいや、今日って七日だよね?」
「?あぁ。」
「そっかー…じゃあ今日がタナバタってやつなのかな」

タナバタ?と俺とレドモンドが首を傾げた。
初めて聞く言葉だ。

「ああ…七夕、か。たしかアジアの一部地域の行事だったな」
「そう、それ

それで、なんかその日ってササっていう植物に願い事かいた紙をさげると、願い事が叶うっていう…」

バイオレットがカリカリとさっきまで描いていたスケッチブックを、俺たちに見えるようくるりと回転させる。
そこに描いてあったのは、きっとバイオレットがいうササという植物と、それにさがる紙の絵だった。

「へえ、中々面白そうな行事だな」
「それにしても、よくそんなに詳しく知っているな」

俺達のようなヨーロッパの国にはそんな行事はないのに、なぜそこまで詳しく知っているのかとおもう。

「昨日図書室にいったら世界の行事について書かれてる本があって、それで。

…やってみたいなぁ…」

ため息まじりに呟いた声にチェスロックが大きく反応する。そしてその後ミッドフォードに何か問うている。おおよそ「ササってなんだ、どこにあるんだ」といった所だろう。チェスロックはバイオレットの言う事は全て叶えてやろうという思いがあるからな。

「でもササはヨーロッパにはないだろう?タケ、といった類似の物もここにはない。」
「うー……だよね……」

しょぼん、という効果音が似合いそうな顔をする。ササ…ササってなんだ…

「アレイストおじさんなら知っていそうだけどな…今からじゃ今夜には間に合わないだろう」

チェスロックが「役立たねぇなこいつ」という目をしたのを俺は見た。

「そうだよね…じゃあ諦めるしかないか…」

かなり落ち込んだように見えるバイオレットに心の中で謝った。何も出来なくてすまん。


「じゃあ、そろそろ寮に戻ろうか」
「あぁ…勉強をしないとな」
「…………うん……」
「ば、バイオレット、そう落ち込むな」


 


 


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