Novel
クップルVSやきもちカミュ


「帰ったぞ愚民」

 あ、カミュが帰ってきた。

『カミュ、おかえりにゃー』

「にゃぁ」

 ハルちゃんから預かったクップルくんとおかえりの挨拶をする。
しかし返ってくるのはたっぷりの間と冷ややかな目。

「なんだソイツは?」

 人間ブリザードが吹き荒れる。寒い寒い寒い寒い。

『クップルくんだよー。可愛いよね、にゃあにゃあ』

「にゃー」

「…ふん。アレクサンダーの方が従順だ」

『クップルくんは賢いよ。……カミュは犬より猫っぽいよね』

「黙れ」

『カミュ酷い。いつものことだけどさー。クップルくん、ちゅー』

ちゅう、と顔を近づけると、クップルくんがキスをしてくれる。かわいいなぁ。

「!」

あれ、背後から禍々しいオーラと冷気を感じる。風邪引きそう。

『カミュ、寒いから魔法使わないで』

「今、なにをした」

冷ややか低音ヴォイス。え、なんで怒ってるの? 身に覚えがないぞ。

『魔法使わないでって言ったね』

「その前だ」

その前は……

『カミュ酷いって言ったから?』

「そのあとだ!」

『……クップルくんとちゅーした』

「ふん。尻軽女め。男なら人でなくてもキスをねだるのか」

『はぁ? クップルくんはネコだよ? なんでそんなこと言われなきゃいけないのさ』

「言い訳するな。貴様、俺というものがありながら他のものとキスをするなど……」

 なにその台詞。普通女の子がいう台詞じゃない?
 でも、その台詞が出ると言うことは……

『…………カミュさん、アレですか? 嫉妬ですか?』

「っ!」

あ、顔赤い。
 ドンピシャだね。

『……ほほぅ。嫉妬ですかぁ』

「うううるさい!」

『ふふふー………カミュ』

 カミュが振り向く。

「なんだ」

 拗ねた顔も可愛いけど、カミュはツンツンしてなきゃだよね。

『ちゅっ』

「な……っ」

『やきもち、嬉しかったよ?』

「…………黙れ愚民」

トマトみたいに真っ赤なお顔で言われても、これっぽっちも怖くないね。

『カミュ、私が好きなのはカミュだけだから安心してね』

「貴様が何を好きでいようと、俺には関係ない」

『ホントは「俺だけを見ていろ」とか言いたいくせに』

「違う!」

『はいはい。大好きな砂糖漬けあるけど食べる?』

「……貴様がどうしてもというなら食ってやらんでもない」

『たまには素直になりなよー』

高飛車で傲慢で横暴でやきもちやきな伯爵様は、私以外に婿の貰い手なんていないね。




あとがき→



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