『敦、ケーキの準備はできたか?』
「おっけー」
『涼太、クラッカーは?』
「ばっちりッスよ!」
『シャンメリーの用意はテツヤだったか?』
「全員分注げました」
『大輝、サンタクロースの帽子はどうした』
「やっぱり被んなきゃダメ?」
『もちろん。こういうのは雰囲気だろ、雰囲気。あ、征十郎。火をつけるのは危ないから俺がやる。座っていいぞ』
「僕だって出来るさ。気を付けるから大丈夫」
『そうか? じゃあ頼むよ』
征十郎が火をつけ終わり、そっと座ったのを確認し、電気を消す。
すると、暗闇の中に幻想的なロウソクの灯りが浮かび上がった。
『真太郎、火を消して?』
「……誕生日会でもあるまいし、普通に消せばいいのではないか…?」
『雰囲気だよ、雰囲気』
「まったく、詩宵はそればかりなのだよ」
仕方なさそうに真太郎が息を吸い込み、ロウソクに向かって吹きかける。
また、真っ暗になったところで、電気をつけ、宣言する。
『これより、白崎家クリスマスパーティーをはじめます! 全員、よく食べ、よく飲み、よく笑え!! ……以上っ!』
「「「いただきますっ!」」」
『いただきまーす』
待ちきれないと言うように、皆がごちそうに手を伸ばす。
「美味しいッス!」
「うまいなー、これ」
「おいしーし。流石詩宵ちん」
『おー、喜んでくれて何よりだ』
俺もごちそうを食べる。自信作のコーンポタージュは、とうもろこしから作った。んまいんまい。
「というか、詩宵さん、良かったんですか?」
『にゃにがー?』
もぐもぐしながらテツヤの方を見る。
「帝光の人たちから、クリスマスパーティーにたくさん誘われてたんでしょう?」
なんだ、そのことか。
『あー、いーのいーの。あいつらは俺がいなくても楽しくやるよ。お前らが俺がいるのがヤだって言うなら、行くけど……俺と一緒は嫌か?』
「嫌なわけないじゃないですか!」
『なら、問題なしっ。愛する子供たちに囲まれてるのが、保護者の幸せなのさ!』
ぐいっ、とシャンメリーをあおる。あー、微炭酸がうまいっ!
『てか、この料理たち凄くね? 頑張ったよね、俺』
「詩宵は、俺たちの親父だからな。出来て当たり前だろ?」
………ん!?
『だだだだ大輝!? 今、なんて……っ!?』
「出来て当たり前?」
『その前!』
「詩宵は、俺たちの親父だから、か?」
『お、おおお親父!? 良いの!? 俺が父親でも!?』
「はぁ? 詩宵は親父だろーが」
なぁ?
と、大輝が言うと、みんなが当たり前だ、と言わんばかりに頷く。
「何を今さら。会って3日目には『息子』と呼んでいたのは詩宵なのだよ」
「俺たちが『息子』なら、詩宵ちんは『父親』だよねー?」
「そうだな。流石に今さら《養父さん》とは呼べないが、父親なのにかわりはない」
『み、みんなぁ……!』
感極まって涙が出てきた。
「詩宵さん、泣かないで下さい」
「そーッスよ! 泣くようなことじゃないでしょ」
『だって…親父とか…嬉しかったんだもん……』
「でも、詩宵ちんに親父って似合わないよねー。どっちかっていったらー…パパ?」
「なるほど。でも、養父さんも捨てがたいな」
『あーもー、なんでもいいよ! みんな大好きっ』
ガバッと征十郎に抱きつき、持ち上げる。
「うわぁ!?」
「詩宵ちん、ちっちゃいしー。俺がやった方が高くない?」
『にょわっ!?』
征十郎を下ろした瞬間、今度は俺が敦に抱き上げられた。
「変な声ー」
「てか詩宵ダセー!」
『うるさいやいっ!』
そんなこんなでパーティーは終わって、みんなで爆笑しながら片付けをした。
特に、一度も台所に行ってないはずのテツヤの鼻に食器用洗剤の泡がついていたのが笑った。
あとあと、真太郎がうっかり飛ばしたものだと判明し、大輝と涼太がここぞとばかりにからかっていた。
『あ、まだ言ってなかった!』
「何をー?」
『ほら、クリスマスといったらアレだよ、アレ!』
「あぁ、アレか」
『よし、みんなで言うよ!』
「了解!」
『いくよ?…せーのっ!』
『「「メリークリスマス!」」』