「酷くされる前に」






今日もいつもどおりの生活をしていた。
そう、いつもどおり。

…ミカエリス先生に手紙で呼び出されるまでは。


皆が寝静まったであろうこの夜中。
ボクはそっと紫寮を抜け出し青寮の寮監……ミカエリス先生の部屋の前に来た。

ノックしようと手を伸ばしたと同時に目の前のドアが開かれドキリとする。

中から出て来たのは勿論ミカエリス先生で、ボクを見るなり薄く笑みを洩らした。

「先生…?何か御用ですか?」


何故紫寮の生徒であるボクを青寮の寮監のミカエリス先生が呼び出すのかが分からない。
現在時刻は23:30。
ハッキリ言って眠い。凄く眠い。明日寝坊しちゃうかも。いや寝坊したら先生のせいだからね。

「ああ…良く来ましたね、バイオレット君」
「呼び出されましたしね」

目の前にいるミカエリス先生はくすくすと笑いながら「まあ取り敢えず中へ…」と言う。
……今座ったら寝そうだなぁ……




「ふぁあ…」と自分があくびをもらしてしまったのに気付いて慌てて謝る。
先生はただニコニコと笑って「眠いのですか?」なんて問うた。

当たり前でしょ今何時だと思ってるの。

「…で、その」
「ああ…こちらにお越しになって貰った理由ですよね?」

こくりと頷くとミカエリス先生は目を細めた。

「…っ!?」
「動かないで下さい。
……ただ調べたいことがあるだけですよ」

すっと椅子から立上がりボクの方まで歩いてくる。なんでか足が動かない。やだ、何?なんか凄く嫌な気がする。


「そう、バイオレット君はそこにいて下さいね?
逃げようなんて考えたら、」




―もっと、酷い事をしますよ―

そう言って笑った先生の目が、紅く光ったように見えた。



 






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