「何が悪かったのか、わかるよなぁ?」





どん、という鈍い音とともに背中に痛みが走る。いたい、なんて言葉すら出す暇もなく腹部にも衝撃が走る。
声のない、空気まじりの嗚咽。"彼"は、そんなボクを見て舌打ちをした。

「おい」
「う、…ぐっ」
「聞いてんのかよ」
「…は、…い」
「あ?何だって?」

再び腹を蹴られる。ああ、せっかく痣が薄くなってきたのに。でも彼は痣が消えると機嫌が悪くなるから、ちょうどよかったのかなぁ。こんなことを考えてしまうほどボクは彼に慣れてきたのだろう。果たしてそれは良いのか悪いのか、そこに関してはもう考えられないけれど。

「お前さ、自分が何だと思ってんの?」
「……いよ………り、です」

聞こえなかったのか壁を殴りつけられる。こわい。未だに直に殴られることよりも、物に当たられる方が恐怖を覚える。

「もう一度聞いてやるよ。お前は俺の、何だ?」
「…せいよく、しょりの…どうぐです」
「アハハハッ!よく出来たじゃねえか」

どうしてなのかな、いつからだったかな、なんでぼくなんだろう。なんで、かれは
あのこと、 しってたのかな、

「ご褒美にグレゴリーくんの大好きなセックスしてあげるから嬉しく思えよ」

やだ

「ほら、お礼言えよ はやく」

やだよ、


「無視してんじゃ」
「あり、が…」

もうやだ

「ありがとう、ございます…」

目の前の男は、彼は、にたりと嗤った











「ひッ……!!!あ!ァああっ、」
「っは、ははっ、お前ほんとこっちの才能凄いよな」
「んっん、やだ、またぁ…っ!」
「一芸に秀でた、ねえ…実際は絵じゃなくてセックスの才能だったり?」
「ちが、ぁっ、あ、あ」

痛いくらいに奥を突かれる。最初の頃は苦痛しか感じなかったこの行為ですら、快感を拾って女みたいに嬌声をあげられるようになったのだから笑うしかできない。痛みに対して鈍くなったんじゃないかな。確かにボクはもう道具なのかもしれない。

「ほらもっと締めろよ」
「んんぅ…ごめ、なさぁ…っあ、ひ!あ!やだやだっきちゃう、もうっ」
「あー…俺もそろそろかなァ…おら、中に出すからな」
「んんっ…なか、やぁ…あ、いっちゃ、も、いく、イ…っ!あっ、ああああっ!!」
「う…っ、はあ」

ああ、もう、また中か。セックスするのは別に良いけどあとが大変だからやめてほしい。中に出されても別に気持ち良くはないし、好きな人のとかならまだしも…そもそも男だし、ただ面倒なのに。

(なんて、本当ならこんなこと考えるとか頭おかしいかも)

自嘲するかのように小さく嗤うと、息を整えたらしい彼はボクの中から抜いた。ここで声をしっかり出さないと彼はまた怒るからちゃんとしなきゃ。
散々ヤるだけヤった彼は時計を見て顔をしかめる。

「チッ…寮監回って来る頃じゃねえかよ…オイ、見られないうちに綺麗にしろよお前。見られたらタダじゃ済まさねえからな」
「んぅ…はい……」

あーあ、そもそもこう汚したのは君でしょ。まあそんなこと言ったら痣とかじゃ済まないから黙っとこ。


ただボクは、"ボク"のために、これを望んでるだけだから、いいんだ。


そんな思いに反するように一筋涙が伝った



161010 series title by モノクロメルヘン






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