昴「ただいまー……」

郁「おかえりなさーい!!」

帰ってきたばかりの昴に、郁が突撃する。
 バスケで鍛えているので、昴は小揺るぎもしない。

昴「っと。走るな、転んだら危ないだろ?」

郁「はーい」

昴「ところで郁、その格好どうしたんだ?」

郁の格好を改めて見ると、長い黒いローブに背丈ほどもある木製の杖、さらにはとんがった帽子まで被っている。

郁「魔女さんなの! にあう?」

昴「あ、あぁ。似合ってる」

 玄関で右往左往していると、リビングから長男・雅臣が出てきた。

雅「郁ー? 昴に見せたかい?」

 昴にしがみついたまま郁が振り返る。

郁「うんっ! 似合ってるって言ってくれた」

雅「よかったね。昴、お帰り」

昴「ただいま。……なぁ、雅兄。何で郁はあんな格好してるんだ?」

雅「昴、今日は何日かわかる?」

 ふふ、と笑いながら言う雅臣。

昴「えっと……10月31日だな」

雅「正解。つまり、ハロウィンだよ。郁が魔女になりたいって言うから、作ったんだ」

昴「雅兄の手作りかよ」

 雅臣クオリティー恐るべし。

郁「ねーねーすばくん! トリック・オア・トリート! お菓子くれなきゃイタズラしちゃうよっ」

昴「お菓子? 参ったな…今は持ってない」

郁「じゃあ……イタズラだねっ」

昴「えっ? ちょっ…」

雅「昴、諦めてイタズラされてあげて?」

昴「……わかった」

郁「えーと、すばくんへのイタズラは……何にしよう?」

 郁は困った顔をして雅臣を見る。

雅「イタズラじゃなくてお願いにしたら?」

郁「お願い? お願い!」

昴「お願い、何にするんだ?」

郁「えっと……あっ! 一緒にみんなのとこ行こ?」

昴「みんなの所?」

郁「みんなに、お菓子ちょうだいって行こうと思ってたの。だから、郁とすばくん二人で行こう」

昴「……まぁ、いいか。この後予定もないし」

郁「じゃあ、れっつごー!」






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