緑間幼なじみ主(・ω・´){でもお相手は紫原くん]
紫原×夢主←緑間
ハロウィンパーティーなう、な俺。 カボチャ模様のスカーフを腕に巻いて参加した(させられた、が正しい)このパーティー。来る予定なんてなかったのに。家でご飯作って過ごす予定だったのに。 しかも、無理やり参加の上にお菓子は俺が作るとか酷すぎる。 パンプキンアイスの仕上げをし、冷凍庫で冷やす。 次は──チョコタルトか。
はぁー、とため息を吐き、湯煎のためのボウルにお湯を注ぐ。
『ハロウィンと言えば……お菓子・仮装・紫原から俺への無言の圧力』
「突然なんなのだよ」
隣で板チョコレートを割っている幼なじみの真太郎は、一応シャツに骨がプリントされているのでボーンの仮装をしていることになっている。本当は刻んだ方が溶けやすいのだが、包丁を持つ手が危なすぎたので細かく割らせることにした。ちなみに向こうから手伝いを申し出てきたのだ。珍しい。
『だから、ハロウィンといえば、この3つだろ。ちなみに一番最後が一番キツい』
「そうか………紫原、か……」
最後の方はよく聞こえなかったけど、チョコがより細かくなっているから良しとしよう。
『Trick or Treat、お菓子くれなきゃイタズラするぞ。………ならまだしも、いくらお菓子をあげてもまだ要求してくるんだぜ? おかしいだろ。ちなみに今年はチョコタルトを要求された』
そう、いま作っているチョコタルトだ。今はチョコレートの部分を作っている。真太郎が割ったチョコレートを俺が溶かしているのだ。ちなみにタルト生地の部分は作り終わって荒熱をとっている。
「……紫原だからな。諦めるしかないのだよ。ちなみに俺はおしるこを希望する」
『えー……』
「今日でなくともいいから、作ってくれ」
『あいさー、わかったよ』
口を動かしつつ、手は休めない。卵と生クリームを入れ、さらに混ぜる。
『あぁ、チョコレートはもう割らなくていいぞ。ありがとう。そこのサンドイッチとパンプキンパイ、持っていくついでに真太郎も向こうで楽しんでこいよ』
「だが、お前は……」
『いつも完全に裏方だし大丈夫だ。まだやることあるし、ここからはやり方知らないヤツには任せらんないからさ。ほら、行った行った』
しぶしぶだったが、真太郎をキッチンから追い出す。 タルト生地にチョコレートを流し込み、アーモンドダイスを散らしてオーブンへ入れ、焼いてる間に後片付けを──
「彩輝ちんはっけーん」
『………どうした、紫原。まだタルトは出来てないぞ』
大きな犬歯(牙)に立った耳、極めつけはふさふさ尻尾の完璧な狼男な紫原が、フラフラとキッチンに入ってきた。
「知ってるー」
後片付けを一旦止め、手を拭き、振り向く前に、紫原が背中に覆い被さってくる。
『紫原、重い』
「…敦」
『は?』
「敦って呼んでよ。てゆーか、呼んでくれるまで離さないから」
『はぁ!?』
え、なにそれ理不尽。 ていうかどーゆー状況なの俺。 とりあえず状況を把握しなければ。
『なんでいきなり名前呼び?』
「だって、彩輝ちんって、みどちんのこと『真太郎』って呼ぶじゃん。みどちんだけズルいし。なら俺も『敦』って呼んでよ」
なんだ、そんなことか。名前を呼ぶくらい、なんてことはないじゃないか。
『敦、重いからどいて?』
よし、クリア。 ようやく離してくれ──
「…………っ!」
──ない、だと……?
何故だ。名前を呼んだのにも関わらずむしろぎゅうっと抱きつかれている。ていうか──
『敦!? あし、足浮いてるから!』
「彩輝ちんに名前呼んでもらえた……!」
『む、紫原、人の話を聞けってばっ』
動揺して名前呼びが戻ったが、紫原には聞こえていないらしい。
チン♪
ちょうど良いタイミングでタルトが焼けたようだ。
『ほ、ほら、タルト焼けたぞ。食べたいなら下ろしてくれ』
「うん」
ニコニコしている紫原──もとい、敦が、俺を下ろす。
『名前呼ばれたくらいではしゃぎ過ぎだろ』
「………ただ呼ばれただけじゃないし」
『え?』
呼ばれただけじゃない? どういうことだ?
「…す…好きな人に、名前を呼ばれたら、誰だって嬉しいでしょ……」
巨人が照れてる……じゃなくて………なんだって?
『む、紫原が俺を好き?』
そういうと、敦がムッとする。
「敦」
今度は気付いたようだ。
『ああ、すまん。……ってそうじゃなくて! 敦の好きな人が俺!?』
「そう」
いやいやいやいやいやいやいやいやいや? 俺は男。敦も男。 ゲイか? ホモか? BLか? 男色なのか?
『敦、お前、男が好きなのか』
「違うし! 男で好きになったのなんて、彩輝ちんだけっ」
『えぇぇぇ?』
「てゆーか早くタルト食べたい」
『………………うん』
もう訳も分からず、無心でタルトを切って、紫原に渡す。紫原は機嫌良くタルトを持ってキッチンを後にする。 そして俺はさっきの言葉を思い出す。
───…す…好きな人に、名前を呼ばれたら、誰だって嬉しいでしょ……
なんだそのセリフは。 アレか? ギャルゲーのツンデレちゃんか? 少なくとも俺が知ってる常識では、それは女の子が男に言うセリフだったはずだ。男×男なんて一部の人間しか───………ああ、敦はその一部だったのか…… お、俺は…
『どうしたらいいんだよ……っ』
──とりあえず、熱くなった頬を冷ますために、冷たいアイスでも食べよう。 何も考えるな、俺。 明日、明日考えよう。 大丈夫なんとかなるって。多分。
end
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