まるでそれは綿飴のような
さっき軽く寮をまわり、出合った生徒にハロウィンお決まりの台詞を投げ掛けていた俺達にはいくつかのお菓子があった。
大抵P4である俺達に話しかけられた後輩等はかなり動揺しながらお菓子を差し出して、そしてバイオレットを見続ける。(後者は同級生もだが)
何故か殆どの生徒がお菓子を持っていた事に驚いたが、そのおかげで今隣りで嬉しそうにお菓子を食べているバイオレットが見れるので、今日ハロウィンは良い物だなと思った。
「……」
淡々と横でお菓子を食べているバイオレットは本当に可愛い。 バイオレットによってさっきまで詰まれていたお菓子が次第に無くなっていく。
「バイオレット、美味しいか?」 「ん?うん」
また口にお菓子をはこんでいくバイオレットを眺める。
「…グリーンヒル」 「どうした?」 「はい、」
あーん、と言いながら口許に持っていかれたチョコレート、これらの意味を理解するのに時間がかかった。
「なっ」 「早くして、チョコ溶ける」
尤もな答えに少しぎこちなく、素直にそのままチョコレートを自分の口内へと納める。
「どう?美味しいでしょ?」 「あ、あぁ…」
でしょ、と嬉しそうにするバイオレットには悪いが、緊張のあまり味なんてものあまり分からなかった。
「あ、それ」
バイオレットが指さしたのは俺が貰った綿菓子だ。
「…欲しいのか?」 「うん」
跳ねるような口調で言われる。 そんなバイオレットに綿菓子を渡すと顔をしかめた。
「……?」 「………」
何故食べないのか、と問おうとした所で意図が分かった。
「……あ、あーん」 「!! ん、」
外れていたら恥ずかしいだろうと思いながら実行してみたらどうやらあっていたようだ。
嬉しそうに綿菓子を食べるバイオレットに胸を撫で下ろす。 唐突に制服の裾が引っ張られる。
「…ね、もっとちょうだい」
ふわりと笑う君はきっとこの綿飴のように甘いだろう
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