Novel
キセキとカラオケに行ってみた


舞台はカラオケ。
仕切るのは女王様。
間違いない。ここは地獄の三丁目。

「オレの歌を聴いて、惚れても良いッスよ彩綾っち! 少なくとも緑間っちよりは上手いはずッスから」

「黙るのだよ。今日の俺の運勢は最高なのだから、貴様ごときに負けるなど有り得ん」

「峰ちん歌下手そー。ま、俺は上手いけど」

「んだと? オレの歌を聴いたらそんなこと言えなくなっからな! 彩綾、よく聴いとけよ?」

「ボクは彩綾さんの歌が気になります」

「あ、タンバリン借りる?」

 それなのにどうしてみんな楽しそうなの?
 犬とおは朝信者と子供(身体はおっきいけど)とガングロと影と巨乳はどうして乗り気なのよ。
 ……でも、断らなかった私も私か。だって気になるじゃん、みんなの歌!
 征十郎といくの久しぶりだし!

「さて、誰から歌うのかな?」

 あぁ、ついに始まった。

「ハイハイハイ! 俺から行きたいッス!」

あ、どうしよう。ハイハイハイがわんわんおにしか聞こえない。

「トップバッターは涼太か。選曲は?」

 涼太が慣れた手つきでタッチ式の選曲装置を操作し、選んだ曲を送信する。
 曲の冒頭と曲名が流れる。

『あー、ジャニ系かぁ』

「黄瀬くんならあまり違和感ないですね」

「そうだな。無難っちゃ無難だがつまらねぇ」

「歌声も飛び抜けて良いわけでもなく悪いわけでもないのだよ」

そうして普通に歌いきり、平均点を0.532点ほど上回るという無難なスタートをきった。

『次の曲はー…A○B48?』

「私〜!」

やっぱりさつきだったか。でも可愛いから許す。
 曲は……フラゲか。
 歌い出しはやや躓いていたが、サビに入ると可愛さ三割増しだ。

『さっちゃん可愛いから、A○B入れるよ』

 そう言うとさつきは少し頬を染める。

「彩綾ちゃんありがとう。でも親戚のおじちゃんみたいだよ?」

頬染めとかもうなにこの子可愛い。
 もしさつきがA○B入ったら一番のファンになる。キモオタを凌駕してやるよ!

『次は誰?』

「緑間くんです」

『マジ? なに歌うか想像もつかなブフォォ!!』

曲が始まった瞬間、その場にいた全員がドリンクを吹いた。あの征十郎も。
 誰も想像をしたことがなかっただろう。まさか、まさか……

「あの緑間くんが、カラオケでどんぐりコロコロを歌うとは……」

『な、なんという破壊力……!』

「童謡、だと…っ」

さすがの征十郎もこれには耐えかねたらしい。全員笑いが止まらない。なまじっかイケヴォだからますます似合わない。
 たとえ歌っている本人が真面目に歌っていても、イケヴォでも、選曲を間違うだけでこんなに腹筋が鍛えられるとは。
 そうして歌いきった真太郎はドヤ顔で笑う。

「ふ、92点か。まぁまぁなのだよ」

ああ、お腹痛い。
 何でチョイスが童謡なんだよ。
そうしている間に、次の曲が始まる。あれ、これって──

『演歌…?』

 しかも氷川き○し。これは誰が歌ってもおかしい気がする。

「俺の番だね」

ま さ か の 。

 一番あり得ないと思ってた人が来た。

『え、ちょっとあっくん、間違ってないの!?』

「間違ってないよー」

疑問だらけだが、そんなことは歌が始まった瞬間どこかに飛んでいった。
普段の姿からは想像も出来ないこぶしのきいた歌は、誰が聴いても上手かったのだ。
 ビブラートもこぶしも沢山あったので、加点されまくりで94点。

「ふぅ、疲れた」

歌い終わったと同時に、私は自分より1.5倍ほど大きい敦に抱き着いた。

『あっくんカッコよかった! 惚れた!』

「彩綾ちんありがとー」

「あー! ズルいッス!」

ふん、デルモ犬はお黙り。

『次の歌は、え……何コレ。デュエットじゃん。大丈夫なの?』

「一人で歌うから問題ねぇ」

お前かガングロ。

『曲名は…Baby! My…』

「その先は権利の侵害になるかもしれないから言わない方がいいよ。わかる人はわかるし、ね?」

ハーイ。

「んじゃ、行くか」

歌が始まった。
 え、ちょっと、コレって……

『うわ……』

中の人一緒じゃん。デュエットだけど。上手いけど歌詞がエロい。聴いてるだけで孕みそうだ。
 普通に「上手いな。歌詞エロいけどエロ峰だしまぁいいか」という感想で落ち着く。
 でもなんかムカつくから曲が終わったら殴ってやる。

『エロいんだよ、馬鹿野郎』

 歌い終わったじんg……じゃなかった、大輝に軽い一発をお見舞いした。ニヤニヤしてんじゃねぇよ。
 正直テツくんの歌を聴いてさっさと帰りたいけど、次は確か私の番だった気がする。

『えー…あの歌の後に歌えと?』

「私、彩綾ちゃんの歌、聴きたいなぁ」

「気になるッス」

「俺も聴きたいー」

ぬぅ……多分断ったら、「やらないとどうなるかわかるね?」と言わんばかりに威圧感たっぷりでこちらを見てくる征十郎に襲われる。それは避けたい。

『わかったよー…』

えーと曲は……これでいいや。

『六兆年いっきまーす』

好きだから歌っているのだが、なぜかみんながこちらを凝視している。何故だ怖い。そんなに下手じゃないハズなのに。
歌い終わると、横から柔らかいものが突撃してきた。

「彩綾ちゃんサイコー! あたし惚れちゃうよ!」

『なにゆえに』

「彩綾ちん、すごいねぇ」

『人並みやで』

「なぜ関西弁なのだよ」

『つっこんだら負けだよ☆』

「もういいのだよ……」

酷いなぁ、真太郎は。

『征十郎ぅー。次アンタでしょ』

私以外がビクリとする。
多分みんなが言いたいことはわかる。
でも今さら変えらんないし?
征十郎はアンタとかって言われるのを怒ったことないし、大丈夫だよね、うん。

「……彩綾以外は耳栓を」

『征十郎くん、カラオケに来た意味を考えようか?』

「だって…」

 ヤだ。と駄々をこねる征十郎に優しく諭す。

『だってじゃないよね? ほら、マイク。アンタが言い出したんだから歌え』

(((誰アレ赤司征十郎じゃない)))

他の六人の表情が微妙なことになっているが、征十郎と彩綾は気付かない。

『歌いきったらご褒美にご飯作るから』

「やろうじゃないか」

さっきまでの駄々っ子はどこへやら。
華麗に赤司征十郎サマがご光臨なさった。
 選曲は《悪ノ娘》。はまり役だ。



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