Novel
無口カップルを観察してみた


「………………」

 水戸部が彼女の手をつつき、彼女が水戸部の顔を見る。

『……………』

首をかしげて、その本面白いか、と水戸部が訊き、彼女は頷く。

よく会話が成立するなぁ、といつも思う。まぁお互いが解ればいいんだろうけどさ。

「コガ、なにしてんだ?」

 伊月がコーヒーゼリーを食べながらやってきた。

「あぁ、アレ見てた」

指をさす方向には無口カップル。

「アイツラか……なんにも話してないのになんか意思の疎通出来てるよな」

「ちなみにさっきは、水戸部がその本面白いか、って聞いてた」

「水戸部が言いたいことが分かるお前もすごいよな…」

そうかな?

『……………』

今度は彼女が水戸部の手をつついた。

「…………?」

 水戸部が不思議そうな顔をする。

『…………』

「…………!」

 彼女が何かを言い、水戸部があたふたしている。心なしか顔が赤い。

「ちょっと待ってくれ、なんでなんにもしゃべらずに驚いたりあたふたしたりできるんだよ! コガ、あの二人なんの話してたんだ?」

「えーっとね、彼女が水戸部を呼んで、水戸部がどうしたの? って言った。んで、彼女が好きって言ったみたい。そして水戸部が照れた!」

「あの二人の無言にそんな意味が!?」

「……うわ、水戸部もあんなこと言うんだ」

 大胆だなぁ。彼女も真っ赤じゃんか。

「今度は何だ!? くそっ、俺にも水戸部たちの言いたいことがわかればいいのに!」

伊月が悔しそうにしているので、何て言ってるのか教えてやる。

「彼女が突然好き、って言ってさ。で、水戸部があたふたして……」

「して?」

「ないしょっ!」

「こがぁぁぁぁあ!」


──これは俺だけの特権だもんね!



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