「はぁーい! みんなのアイドル、林檎ちゃんよぉ!」
きゃるんっ♪ そんな効果音が聞こえてきそうな登場をした担任・月宮林檎は、可愛らしい見た目、女の子のような言葉遣いとは裏腹に、女装アイドルというれっきとした男だ。
「今日は自己紹介と、校舎の案内をしたら各自自由に行動していいわ。あ、でも一回自分の寮の部屋に戻って、ルームメイトと顔合わせしてね♪」
林檎先生が名簿を開く。 「自己紹介は、名前・年齢・コースを教えてちょうだい。なんだったら何か特技とかを披露しても良いわよぉ」
特技? 特にないんだけどなぁ…。 まぁ、なんとかなるか。
「さあ、どんどん自己紹介していってね」
「はいはいはい! 一十木音也、十六歳。アイドルコース! 好きなことは歌うことっ」
元気良く自己紹介をした音也が、明るい曲調で歌い出す。元気が出てくるような、そんな曲だった。
「では……聖川真斗。十七歳、アイドルコース。一年間、よろしく頼む」
きっちり四十五度の角度で真斗がお辞儀をする。 なんて几帳面なんだ!
「四ノ宮那月です。歳は十八、アイドルコースです。特技は料理で、今度作ってきますから、皆さん食べてくださいね」
へー、料理かぁ。俺も作ってくるかな? 友千香たちのほかのクラスメイトも全員終わったらしい。 残るは俺だけだ。
「えーと…仰上彩輝です。一応、作曲家を目指してまーす。特技は……声帯模写かな?」
「へぇー、すごいわねぇ。ね、彩輝くん、やってみてくれる?」
「えーと、じゃあ…」
深呼吸をし、林檎先生の声帯模写をやってみる。
『はぁーい! みんなのアイドル林檎ちゃんよぉ! 今日は自己紹介と、校舎の案内をしたら各自自由に行動していいわ。あ、でも一回自分の寮の部屋に戻って、ルームメイトと顔合わせしてね♪』
意外と出しやすい声だな、と思った。 あぁ、元は男だからか。
「……っと。こんな感じですか?」
上手くできたか分からず聞くと、林檎先生がキラキラした目でこちらを見ていた。
「すっごーい! 彩輝くんそっくりよぉっ。まるでアタシが二人いるみたいよ!」
拍手がおこる。成功だったようだ。
「さて、自己紹介も終わったことだし、校内案内するわよー。廊下に出てー」
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