やぁ! 仰上彩輝です。ただいま絶賛落ち込み中☆ え、何故かって? 決まってるじゃないか!

 ──来週、この学園に姉さんがくるからだよっ!!
もちろん、俺の姉ではなく作曲家の六花としてだ。 いやいやいやそんなことあの人に出来るものか。絶対手とか振ってくるぞ。

「うー……」

日の当たらない教室で弁当を食べながら唸る。音也と真斗と那月も一緒だ。
音也はサオトメートの惣菜パン(三個)、真斗はお弁当(重箱)、那月はサンドイッチ(二個)を食べている。 ……おのれ、育ち盛りめ。

「彩輝、どうしたの? さっきから機嫌が悪そうだけど」

「普段も少量しか食べていないが、今日はいつも以上に食が進んでいないようだな」

三人とも心配そうにしている。
この間倒れてしまったせいか、心配性になってる気がするのは気のせいではないと思う。ちなみに今日も午前授業だ(課題が出たためだ)。

「……なんでもねー」

「彩輝くん」

誤魔化したからか、困った顔をした那月が見つめてくる。
なんというか……逆らえない。やはり年上だからか?

「……おねーさまが学校に来るんだって」

「お姉様とは……六花さんのことか?」

「そー。瑠璃姉が特別講師として来るってメールが金曜日に来た」

「でもなんでそんなに嫌がってるの?」

なんで、だと……?

「お前らな……瑠璃姉の怖さを知らないからそんなこと言えるんだ。思い出しただけで背筋に冷たい汗が伝うぜ……例えばな、」

<ピロリロリン♪>

「っと、メールだ。ちょっと待ってくれ。瑠璃姉の話は後でな」

メールを確認する彩輝。

「ちょ、嘘だろ!?」

メールを確認し終えた彩輝が、挙動不審になっている。何があったのだろうか。

「彩輝、なんかあったの?」

「皆、今から俺を探しに来るやつがいるから、俺はいないって言ってくれ! 頼んだぞっ」

そう言って急いで後ろのロッカーに隠れる。

「……彩輝くん?」

その三秒後、誰かが教室に入ってきた。

「あれ? トキヤ。どうしたの?」

 入ってきたのは、音也のルームメイトの一ノ瀬トキヤだった。

「ああ、音也。ちょうど良いところに。人を探しています。仰上彩輝という男を知りませんか?」

 どうやら、彩輝を探しに来たのはトキヤらしい。

「彩輝くんなら、後ろのロッカーに…もごっ」

「四ノ宮!」

 真斗が急いで那月の口をふさいだが、もう手遅れだった。

「ほう……? 彩輝、大人しく出てきなさい。私から逃げられると思っているのですか」

 ロッカーに向かってトキヤが話しかける。
 端から見たら奇特な人にしか見えない。

『……なんでいるんだ』

 不機嫌な彩輝の声がする。ロッカーに入っているので曇って聞こえる。

「私もこの学園に入学したからに決まっているでしょう」

『ふざけるな』

 彩輝がいつもより三割ましで口が悪い。

「彩輝、トキヤと知り合いなの?」

『俺が向こうにいたときにたまたま知り合ったんだけど、それ以来しつこくて』

「しつこいとはなんですか!」

「向こうって?」

『アメリカ』

「アメリカ!?」

「……とにかく。彩輝、いい加減にしなさい。出てこないと六花さんに言いつけますよ」

『く…っ! 卑怯だ!』

「なんとでも言いなさい」

渋々ロッカーから出てくる。

「ようやく出てきましたか」

「半ば無理やりだろうが」

「トキヤと彩輝、随分仲が良いんだね」

 音也が声をかけると、とんでもない、と彩輝が顔をしかめる。

「トキヤはしつこいから嫌いだ」

「あなたの曲を歌わせてくれたらここまでしつこくすることもないのです」

「絶対ヤだね!」

遂には、プイ、とそっぽを向いてしまった。
 さっきまであまり食べていなかったお弁当を掻き込み始める。

「トキヤ、ちょっと来て」

トキヤを呼ぶ。
 そして早速本題に入る。

「トキヤ、さっきから何の話をしてるの?」

「歌がどうとか話していたようだが……」

 説明をしなければいけない雰囲気に押されたトキヤは、説明し始める。

「……彼とは、二年前にアメリカで出会ったのです」




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