……痛い。 俺、仰上彩輝は心底そう感じている。 俺は今、校舎の廊下を歩いているのだが──突き刺さっている視線が痛い。 チラチラと見る者、凝視する者。たくさんの人が俺を見ている。 皆共通しているのは、困惑した表情を浮かべていることだ。
(見たことないヤツがいきなり現れたら、そりゃ困惑するだろうけどさ……)
もう少し遠慮ってものをして欲しい。好奇の視線で見られるのは、けして愉快なものではないのだ。 多分、誰一人として今の俺(白髪で赤眼の上、太陽から目を保護するためサングラスを着けている)と昨日の俺(黒髪で茶眼)が同一人物だと気付くヤツはいないだろう。 はぁ〜〜、と特大のため息を吐く。
「……仰上。どうした」
後ろから声をかけてきたのは、同じクラスの友人、聖川真斗だ。 コイツと、四ノ宮那月、一十木音也、七海春歌、渋谷友千香の五人は、俺の事情を知っている。
「よぉ、真斗。……見てわかんねぇ?」
「確かに、視線が突き刺さってくるようだな」
真斗も困ったように眉寄せる。 あーチクチョウ。
「視線もなんだけどさー…」
チラ、と横目で周りを見ると、皆が何やらヒソヒソと話している。
「あーゆーコソコソなんか言われんの、好きじゃないんだよなぁ」
そう言ってぶすくれる俺に、真斗は、
「仕方あるまい。早く教室に向かおう」
と、背中を押してくれる。
「オーケー。早く座って落ち着きたい…」
友人ってイイモンだなぁ、としみじみ思いながら、少し足を早めた。
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