黒執事捧小説 | ナノ



──ドキドキする。
口から心臓が飛び出てしまいそうだ。
 白鳥宮で先輩と会うのに正直これほど緊張したことはない。
もちろん(恋愛的な意味で)好きだけど、それは叶わないことを知っていたから、普通に接してこれた。だけど……

俺は、ドキドキの原因となった一通の手紙を上着から取り出す。


『チェスロックへ

  明日の午後2時、白鳥宮に来て。
  話があるんだ。
  他の人は来ないように言っておいたから。

 グレゴリー・バイオレット』


珍しく、というよりは初めて、先輩から手紙で呼び出された。
しかも内容がまるでラブレターな上、二人きりで話す。

(うわぁぁぁああああぁぁ!)

心拍数が上がっても、顔に出ないよう、気を付けなければ……
















「あれ? チェスロックもう来てたの」










「Δ∈※§★♂▽≠▼!?」

「……………大丈夫? 主に頭と喉」

しまった。やってしまった。

「…ゴホンッ…先輩、すみません。大丈夫です」

「うん、それなら良い」

「で、話って…?」

直球に聞く。

「ああ、コレ」

 ぽん、と渡されたのは、小さな箱だった。

「…………?」

「なにボーッとしてるの。早く開けてよ」

意味が分からず呆けていると、先輩から催促される。
 急いで開けると、そこには──

「指輪?」

紫の宝石が輝く、指輪が鎮座していた。

「うん。貸して」

 そして、指輪を手に取ると、俺の手につけた。
 左手の薬指だった。

「バイオレットサファイア」

「へ?」

 全く状況が飲み込めない。なにが起きてるんだ。

「その石の名前。深い紫の宝石。僕の名前が入ってるし、紫だから相応しいと思って」

「何に……ですか?」

「………まだわかんないの?」

「えっと……はい」

「……………く、だよ……」

「え?」

「だから、告白だよっ!………好き、だから、付き合って?」

 え?
 えぇぇぇえ!?

「誰が?」

「君が」

「誰と?」

「僕と」

 ……………………マジですか。



 コレが夢じゃないならカモがネギを背負ってきたどころじゃなく、先輩的にはフランスパンがフランスパンを背負ってきたのではないだろうか。

 とりあえず頬をつねるか? いや待て現実だったときそれは恥ずかしい。


「チェスロック、なに一人で百面相してるの?」

「!!?」

目の前に先輩の顔。
告白してきた、先輩の顔。ほんのり赤い頬。



──夢なら夢でそれでいいし、現実なら現実だったときだ!!




腹をくくった俺は、バイオレット先輩にキスをした。
勢いがつきすぎて、歯が当たった音がした。
 先輩はビックリしていたようだけど逃げなかった。

──受け入れて、もらえた。




歯が当たった唇は、切れて痛い。本当に、バイオレット先輩と──








その日から、俺たちは恋人になった。

「そういや、先輩はなんで俺の指のサイズ知ってたんですか?」

「夜寝てるときにはかった」

「え」

「チェスロック、パジャマ可愛いよね」

「なぁっ!?」










レ「●REC」
グ「レドモンド、あとでそれ見せろよ」
ブ「お前たちは何をしてるんだ……」



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